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「私はいまレバノンにいる」――。無罪を主張しつつ、正々堂々と法廷で争うことなく日本から逃亡した元日産会長カルロス・ゴーン被告(66)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの罪で起訴=。日本政府は国際刑事警察機構(ICPO)を通じレバノンに身柄拘束を要請しているが、レバノン側は否定的な姿勢で、日本で公判が開かれる見通しは立っていない。一方で主役不在ながら、行政処分は既にゴーン被告の不法行為を認定し、司法も脇役(共犯)の公判で有罪を追認する可能性がある。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

日産の課徴金命令受け入れで不法行為認定
 大きく報道されていないので気付かなかった読者の方も多いと思うが、金融庁は2月27日、ゴーン被告らの役員報酬を過少に偽って有価証券報告書(有報)に記載した金融商品取引法違反があったとして、法人としての日産に約24億円の課徴金の納付を命令した。

これに先立って昨年12月、証券取引等監視委員会(SEC)は同額の課徴金を納付させるよう金融庁に勧告していた。

 SECは東京地検特捜部とともに事件を捜査(SECは行政機関なので正しくは調査)して同法違反容疑で地検に告発した、金融庁に属する「審議会等」の一つだ。そして、法令違反が認められた場合、行政処分を勧告するのもSECの役割だ。

もっとも、同法違反容疑で地検に告発した機関だから、告発した容疑内容に基づき勧告するのは当然の流れだったとは言える。

 ゴーン被告と法人としての日産、共犯とされた前代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)の起訴内容は、ゴーン被告の2011年3月期〜18年3月期の役員報酬が計約170億円だったのに、約78億円と記載した有報を提出したとされる。

 日産の命令対象はこのうち、15年3月期〜18年3月期の4年分。検査前は起訴内容を違反事実として課徴金は約40億円に上る見込みだったが、日産側が違反事実を報告して減額申請し、SECが認めていた。

 日産は命令を受け「決定を真摯(しんし)に受け止める。告知書に従い国庫に納付する」とするコメントを発表していた。

 つまり「市場の番人」であるSECの勧告を受け、金融庁も追認して日産に課徴金を命令。日産も受け入れたことで、行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定されたわけだ。

脇役の公判で刑事責任明らかに
 では、ゴーン被告の刑事責任はどうなるのか。

 昨年末まで1カ月に1回の割合で公判前整理手続きが開かれていたが、ゴーン被告の逃亡で一時停止された。

 一方、日産とケリー被告は分離公判になることが決まった。初公判は4月21日に開かれる予定だったが、3月6日の公判前整理手続きで、尋問する証人や時間配分の調整に時間がかかるため、5月以降に延期されることになった。

 東京地裁は初公判が開かれる予定だった4月21日を公判前整理手続きの期日に指定し、争点をさらに詳細に絞り込む方針だ。

 冒頭、「主役不在」と書いたが、刑事訴訟法第83条第3項の規定で、被告と弁護人の法廷への出席を開廷の原則としている。

 これは日本国憲法32条「裁判を受ける権利」で規定されているためだ。当事者や弁護人が出席しないで意見を述べる機会が奪われる「欠席裁判」はNGということだ。

 だから、ゴーン被告不在でゴーン被告の公判を開くことはできないのだが、分離公判という形で日産とケリー被告の公判を開くことは可能だ。

全文はソース元で
2020.3.23 4:55
https://diamond.jp/articles/-/232362