統一まで1111年

日本政府が中国と韓国からの入国制限を決定したことに対し、韓国は対抗措置として日本人を対象とするビザなし渡航の停止を決定。この措置には大きな驚きの声が聞かれました。

 2019年には徴用工問題をきっかけに「ホワイト国外し」「GSOMIA破棄」問題が浮上。韓国内では日本製品に対する不買運動に発展しました。

 日韓両政府はいったいなぜ、対抗措置の応酬を繰り広げるのか。

 書籍『反日韓国という幻想』(澤田克己著、毎日新聞出版刊)より一部抜粋をお届けします。

 ◇安倍政権にとっても韓国にとっても「想定外」!

 日本による輸出規制強化への反発がここまで強くなったのは、安倍政権にとって想定外だった。元徴用工訴訟での日韓請求権協定に反する確定判決が出たのに放置している文在寅政権にいらだち、対応を促すための「アラーム」程度に考えていたからだ。

 首相官邸は2018年10月に韓国最高裁の確定判決が出た後、韓国を圧迫するための対抗措置を考えるよう各省庁に指示し、経産省が出した案が輸出規制強化だった。

 経産省も事務レベルでは消極的だったようだが、最後は官邸が決めたのだという。

 2019年7月1日の発表直後に会った日本政府高官は、「今回の措置を選ぶにあたって考慮されたこと」として4つを挙げた。

 まずは日本へのインバウンドに影響を与えないこと。

 残りは、日本企業の被る被害を最小限にする、韓国の国民を敵に回さない、国際法に違反しない、という3点である。

 この時点ではまだ、日本政府は韓国の反発を軽く見ていたようだ。

 高官は「韓国の半導体生産に悪影響が出るようなことはないだろう。経産省も輸出を止めようとしているわけではないから」と話していた。

 8月初めにはバンコクで日韓外相会談が行われ、輸出規制や元徴用工訴訟の問題が議題となった。

 安全保障問題を担当する日本外務省幹部はこの時、「事前準備の紙に軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)は入っていなかった。米国も破棄するなと言ってるし、そこは大丈夫でしょう」と私に語った。

韓国がGSOMIA破棄を日本に通告する前に会った安倍政権の閣僚も「元徴用工訴訟できちんとした対応さえしてくれれば、輸出規制の問題なんかたいした話ではない」という具合だった。

 朝鮮半島情勢に精通した地域専門家たちの知見を無視して決めたからだろうが、韓国側の反応をまったく予想できなかったということだ。

 ◇「ノー安倍」だけのつもりが日本全体を敵に…

 ただし、勘違いというか、相手のことを分かっていないことでは韓国側も五十歩百歩である。

 好例が「ノー安倍」というスローガンだろう。

 韓国では、安倍政権にノーと言うことは、日本全体を敵に回そうというのではない「理性的」な対応だと受け止められている。

 輸出規制をしても韓国国民を敵に回さないと考えた日本政府と、考えの浅さにおいて大差はない。

 日本側の措置に対する反発を巡っては、韓国でも保守系大手紙を中心に「行きすぎた反日」をたしなめる声が当初からあった。

 その後、与党所属のソウル都心の中区長が「ボイコット ジャパン」と書かれた垂れ幕を通りの街灯などに並べさせたことに「やりすぎ」批判が殺到し、区長は謝罪と垂れ幕撤去に追い込まれた。

 これを契機に「ノー・ジャパンではなくノー安倍」という流れができたのだという。

「ノー・ジャパンではない」と言いながら不買運動を展開するのは矛盾しているように思えるが、とにかくスローガンは「ノー安倍」が圧倒的になった。

 私を「倭寇」扱いした8月15日の集会でも、目立ったのは「ノー安倍」だった。

 この流れはその後も続いた。神戸大の木村幹教授が9月末に参加したソウル郊外でのシンポジウムでは、盧武鉉(ノムヒョン)政権での閣僚経験者が「安倍政権は我々に不当な圧力をかけている」と主張していたそうだ。

 木村氏は、与党の長老級政治家を含めてその場にいた人々の多くが「経済産業省による輸出規制強化以降の状況を、単純に『極右』安倍政権の施策によるものと考えており、だから安倍政権さえ存在しなければ問題は容易に解決する、と信じている」と見た(「ニューズウィーク日本版」電子版)。

全文はソース元で
3/26(木) 18:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200326-00000001-economist-bus_all
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200326-00000001-economist-000-view.jpg