国民の公的年金資金を管理運用する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」。その規模は、2019年6月末時点で「161.7兆円」にも上り、安倍総理が「世界最大の機関投資家」と豪語している。そして同年、年金の健康診断とも称される「財政検証」の結果、GPIFが、保有資産を売却する可能性が浮上した。元野村投信のプロファンドマネージャーで、現・金融経済評論家の近藤駿介氏は、『202X 金融資産消滅』(KKベストセラーズ)にて、GPIFの功罪を指摘している。

公的年金資金を運用し「14兆8038億円」を損失
「世界最大の機関投資家」として多額の公的年金資金を運用するGPIFは、2018年度に2兆3795億円の収益を上げ、公的年金資金の市場運用を始めた2001年度からの収益累計が65.8兆円に達したと報じられています。しかし、常に順調に収益を上げてきたわけではありません。

GPIFは、2015年度には第2四半期(2015年7月から9月期)に7兆8899億円、第4四半期(2016年1月から3月期)に4兆7990億円の損失を計上し、年度を通しても5兆3098億円の損失を計上しています。

さらに、2016年度第1四半期(2016年4月から6月期)には5兆2342億円、2017年度第4四半期(2017年1月から3月期)には5兆5408億円の損失に見舞われたほか、2018年度第3四半期(2018年9月から12月期)には米国を中心とした世界的な株安に円高が加わったこともあり、14兆8038億円という大きな損失計上を余儀なくされています。

このようにGPIFはたびたび多額の損失計上に見舞われているのです。そしてその度に一部のメディアで公的年金が破綻するかのように大きく取り上げられる一方、政府は一貫して「短期的な運用結果が年金財政の問題に直結したり、年金給付に直ちに影響を与えたりすることはない」と全く意に介さないようなコメントを出す光景が繰り返されました。

では本当にGPIFが運用で大きな損失を出しても年金給付には支障はないのでしょうか。

政府「年金給付に直ちに影響を及ぼさない」の真意は
政府がGPIFの多額の損失計上にもかかわらず落ち着いていられるのは、現在の年金給付が現役世代から徴収する年金保険料と税金で賄われていて、GPIFの運用資産が財源として使われていないからです。

現在年金給付の財源としてGPIFが管理運用する資金は使われていないのですから、GPIFが短期的に数兆円、時には10兆円を超えるような損失を計上しても政府は「年金給付に直ちに影響を及ぼさない」と他人事のようにしていられるのです。

GPIFの運用失敗が直ちに現在の年金給付に影響が及ぶのであれば政府はこんなにのんびりはしていられません。年金支給額の減額を余儀なくされ、それが年金受給者である世代の反発を招いて選挙結果に悪影響が出ることは必至だからです。しかし、現在の年金受給者への年金支給は現役世代から徴収した年金保険料と税金で賄われており、GPIFの運用成績とは切り離されています。こうした状況なので、安倍政権はGPIFの運用成績に無頓着でいられるのです。

そして、GPIFの運用失敗が、現在の年金給付に影響が及ばない状況になっていることが、GPIFの資金をアベノミクスの成果を演出する道具に使おうとさせた要因であるともいえるのです。

「公的年金2000万円不足問題」裏にあるGPIFの罪
2014年10月31日、GPIFは日銀の追加金融緩和にタイミングを合わせるように、従来の「国債偏重型」基本ポートフォリオを、内外株式の比率を高めた「リスク選好型」へと変更しました。

これにより、当然GPIFの運用成績は内外株の動向の影響を強く受けるようになりました。2015年度以降、GPIFがたびたび大きな損失を計上するようになったのも、内外の株式市場や為替の影響を受けやすくなったからに他なりません。

もしGPIFの運用成績が現在の年金受給者の年金支給額に直接影響を及ぼすものであれば、おそらく「消えた年金問題」で一度政権を手放さなければならなくなった苦い経験を持つ安倍政権が、GPIFの基本ポートフォリオをリスク選好型に変更することはなか

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3/30(月) 9:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00026239-gonline-bus_all
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