身を寄せた寺院の部屋でスーツケースの上に教材を広げ、日本語を勉強するベトナム人のドー・ティー・トゥー・フォンさん=東京都港区で2020年4月30日、小川昌宏撮影
 8畳間の片隅に置かれたスーツケース。ベトナム人のドー・ティー・トゥー・フォンさん(23)は4月下旬から東京都港区の寺院で生活している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事が無くなり、3月から収入がない。「家族のためにお金を稼ぎたい。日本で仕事を探したい」

 2018年に技能実習生として来日。東海地方でプラスチック加工に従事したが、不当な扱いを受けて今年2月に退職。実習生と企業を結ぶ監理団体を通じて他社への転籍を約束されていたが、感染の拡大により白紙に。将来が見えないまま約2カ月間、シャワーも台所もない団体の事務所で「毎日カップ麺を食べていた」。苦しい生活を思い出すと、目に涙を浮かべた。

 知人を介して在日ベトナム人を支援するNPO法人「日越ともいき支援会」に保護され、同法人が拠点とする寺に身を寄せた。ベトナムは3月下旬以降、全ての国からの入国を停止し、帰国できない。農家の実家には足が不自由な父と中学生の弟もいる。来日時の借金も、まだ半分ほど残る。「とにかく早く働きたい」。同胞への支援活動を手伝いながら、日本語を勉強している。【小川昌宏】

毎日新聞2020年5月16日 16時40分(最終更新 5月16日 16時40分
https://mainichi.jp/articles/20200516/k00/00m/040/164000c