夜の政治

東京高検の黒川弘務検事長が辞職を決めたことを巡り、野党各党は21日、安倍晋三首相の任命責任は重いとして「内閣総辞職に値する」(立憲民主党の安住淳国対委員長)などと一斉に批判した。従来の法解釈を変更し、黒川氏の定年延長を認めた1月の閣議決定の撤回も要求した。新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向にある中、政権との「協調路線」を見直し、対決姿勢を強める構えだ。【浜中慎哉、水脇友輔、宮原健太】

 「『余人をもって代えがたい人』が賭けマージャンをやったわけで、そんな閣議決定をずっと残したら恥だ。首相や森雅子法相には大きな政治責任が発生した」。安住氏は21日、記者団に対し、政府が黒川氏を定年延長する理由に挙げた「余人をもって代えがたい人」を持ち出して今回の不祥事を皮肉ったうえで、政権幹部の責任に言及した。

 国民民主党の玉木雄一郎代表も「内閣の長は首相だから、安倍首相の任命責任も厳しく問われる」と語った。

 立憲、国民、共産、社民の野党4党は国対委員長会談で、22日以降の国会対応を巡り協議した。国民の原口一博国対委員長は記者団に「(定年延長は)検察の独立性と三権分立を侵す重大な問題だ。22日の衆院法務委員会で徹底的に質疑する。厚生労働委員会には首相も出席する」と指摘。首相本人を問いただし、政府側の答弁次第では審議拒否などの強い措置をとる可能性も示した。

 野党は新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言の発令後、今年度補正予算の成立に協力するなど、政権への協力に重心を置いてきた。だが政府・与党が、内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能にする検察庁法改正案の審議を強行したことから、与野党の対立が深まった。与党は改正案の今国会成立を断念したが、新型コロナを巡る緊急事態宣言の対象区域の段階的な縮小もあり、与野党で危機対応にあたった協調ムードは薄れつつある。

 野党は検察庁法改正案を含む定年延長問題は、「長期政権におごる安倍政権の体質」(野党関係者)に端を発したとみている。共産党の志位和夫委員長は21日の記者会見で「(黒川氏の)辞任で幕引きするわけにいかない」と強調した。国会審議では、定年延長の閣議決定の撤回を迫るほか、首相の政治姿勢なども改めてただす方針だ。

 野党4党は21日、首相が後援会関係者を多数招待した疑惑のある「桜を見る会」の合同追及本部を3カ月半ぶりに開催。首相と後援会幹部の告発状を東京地検に提出した弁護士らから意見を聞いた。立憲幹部は「政府と野党はいま厳しく対峙(たいじ)をしなければならない状況だ。コロナ対策では協力するが、それとは別に、桜を見る会などはやらなければいけない」と強調した。

毎日新聞2020年5月21日 19時45分(最終更新 5月21日 19時46分)
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