ジム・ロジャーズ 日本株を再び買い始めた
広野 彩子 日経ビジネス副編集長 2020年5月22日
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/052100044/

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「日銀の爆買いが株式市場を支える」と語るジム・ロジャーズ氏 (写真:的野 弘路)

 2020年3月18日に掲載したインタビュー記事「ジム・ロジャーズ 新型コロナは危機の序章、本番はこれからだ」で、新型コロナウイルスの問題について「過剰に騒ぎすぎだ」と指摘していたジム・ロジャーズ氏。世界的に感染がエスカレートする前の時点では同じような見方をする識者も少なくなかったが、その後、新型コロナウイルス問題は深刻化した。激変した世界の現状をロジャーズ氏はどう見ているのだろうか。

●自分(が総理大臣)だったら(コロナ対策は集団免疫政策の)「スウェーデン式」を選んだ (略)

●治療は時に病そのものよりも深刻な症状をもたらす (略)

●過去に経験したことがない大規模なばらまき (略)

●昨日、日本株を買った

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 「これほどの大規模なばらまきは過去に経験したことがない。世界中の国が大量にお金を刷っている。巨額のお金を使っている。そしてそれがマーケットに流れていく。もちろん(こうした動きを受けて)市場はいったん上昇基調になる可能性が高い。莫大なマネーが流入するときはいつでも、マーケットは極めて強気になる」

 「実は、昨日(5月18日)、日本株を買った。なぜなら、日銀が毎日株式を買っているからだ。私も同じようにしたほうがいいと思った。日銀は私よりもはるかにたくさん日本株を買っている。日銀が買い続けるなら、しばらく株価は上向くに違いない」

 2018年にいったん日本株をすべて売却した後は、様子見の姿勢だったロジャーズ氏が、ついに日本株の購入に動いた。日銀は、ETFを買い続けることで、日本企業の“大株主”になっている。半導体製造装置メーカーのアドバンテスト、「ユニクロ」のファーストリテイリング、ファミリマート、ファナック、京セラ、キッコーマンなど、日銀がETFの購入を通じて10%以上の株式を間接的に保有するようになっている企業は数多い。

 新型コロナ問題を受けた経済対策の一環として、日銀はETFの年間買い入れの上限額を6兆円から12兆円に引き上げた。このような日銀の爆買いは「今後も当面続く」とみて、ロジャーズ氏は日本株買いに動き始めたのだ。米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)も、5月中旬にETFの買い入れを開始した。これに先駆けて、禁じ手だった社債の購入にも踏み切っており、格付けの低いジャンク債にも対象を広げようとしている。世界中の国々がタブーなき経済刺激策を打ち出している。

 だが、中央銀行が、株式や社債を爆買いすることは、経済にとって本当に良いことなのだろうか。

 「これが日本経済にとって良いことか? 米国経済にとって良いことか? 答えはもちろんノーだ! ダメに決まっている。非常に悪いことだ。それでも米国は今年11月に大統領選がある。正直、政治家たちはそのことしか考えていない。高齢者のこと、子供たちのことなど、微塵も考えていない。世界中のすべての政治家は、再選されて今の地位にとどまることだけを考えている。これは最悪の間違いだ。しかし、実際に起こってしまった」

 世界的に見れば些末なことかもしれないが、日本では、政府が配ると決めたマスクでさえも、現時点でまだ全国民に届いていない。

 「マスクがまだ届かない? なんで? 安倍晋三首相に『ロジャーズを呼んでくれ』と伝えてくれ(笑)。それは冗談だが、そうなっているのは、国民にではなく、株式市場に先にお金が回っているからだろう」

 次回は、ロジャーズ氏がコロナ・ショック後の世界で強い関心を持っているテーマや、最近の投資に関する考えを語るインタビューをお届けする。なおロジャーズ氏は新刊『危機の時代』の読者を対象にしたウェブセミナーの開催に意欲を示している。詳細は今後決まり次第お知らせする。


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