新型コロナウイルスが予測不可能な不安感を肥大化させ、全世界が混乱状態に陥っている。
これまでにない大規模な不況の到来も危惧されており、経済、金融、社会、国際政治などへの影響も計り知れない。

この先の世界情勢はどうなるのか。『ジム・ロジャーズ 大予測: 激変する世界の見方』
(ジム・ロジャーズ 著、花輪陽子/アレックス・南レッドヘッド 監修・翻訳、東洋経済新報社)が大胆に予測している。


ところで今回のコロナ危機はパンデミックであるだけに、中世末期の欧州で流行したペストと比較されることも少なくない。
例えばカミュの『ペスト』がここにきてまた多くの人に読まれていることからも、それは推測できる。

しかしロジャーズ氏は、そうした考え方に否定的だ。

今回の新型コロナにおける世界全体での死者数は、5月20日時点で約32万人。
これ自体、絶対数としてとんでもなく大勢の方が亡くなっているが、ペストとは比較の対象にならない。

ペストでは当時の欧州の人口の3分の1、国によっては8割以上の人が亡くなった。
過敏になりすぎるのではなく、現実を踏まえたうえで冷静さを失わないことが重要であるということだ。

もちろんメディアは、ペスト再来だと、そう思ってほしいだろう。なぜならセンセーショナルに書けば新聞も売れるし、ネットのアクセス数も増えるからだ。
毎年アメリカでは4万人がインフルエンザで亡くなっている。全世界ではインフルエンザでは毎年、数万、数十万の死者が出ている。
数字の上では、メディアが報道している恐怖とはほど遠いものと言える。

しかし、世界の人々は、すでに「恐怖」に支配されてしまっている。メディアやインターネットが反応しすぎているため、政治家も相応な対応をとる必要があり、
積極的な措置をとらざるをえなくなっている。かつて、新聞を売るためにメディアは戦争や危機を煽ってきた。今回のコロナは現代版の「新聞を売る口実」と見ることもできる。(15ページより)

今回の騒動は、マーケットにとっては、人工的につくられた不必要なパニックなのだ。しかし、現実にパニックは起きているので、もうパニックや株の急落を止めることはできない。
したがって、意図的につくられたか否かは別として、投資家は売り続けている、それが現実ということになる。売りを望んでいた投資家やメディアは成功したのだ。(16ページより)
https://toyokeizai.net/articles/-/351869?page=3
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