https://news.yahoo.co.jp/articles/377534ea9874827473a4e8439ce5abcf79b6030d

「俺はコロナだ」。愛知県内で、新型コロナウイルスに感染をしているかのような発言をして
逮捕される事件が相次いでいる。いったい何が起きているのか。

3月以降、愛知県警は威力業務妨害や脅迫などの容疑で7人を逮捕、1人を書類送検した(うち1人は不起訴処分)。
逮捕、書類送検された7人は、いずれも男。年齢は大半が40〜70代だ。

名古屋市に住む男(54)は5月15日、同市内の路上で「コロナばらまくぞ」と言いながら住民に息を吹きかけたとし、
脅迫容疑で逮捕された。

同じ日、住居不定の無職男(63)も愛知県東郷町の公共施設で「俺コロナだぞ」と言いながら職員につばを吐いたとして、
威力業務妨害容疑で逮捕。その後、暴行罪で起訴された。

こうした事件は、松江市や宇都宮市など各地で発生。しかし、愛知県で逮捕、発表される件数が突出している。
県警幹部は「この社会情勢下では、たった一言の悪ふざけでも悪質性は非常に高い。
逮捕、発表することで抑止につなげるのが重要だ」と強調する。

県警が神経をとがらせる理由のひとつは、3月に蒲郡市で起きた事件がある。一斉休校が始まって間もない同月4日、
新型コロナウイルスへの感染が確認され、自宅待機を要請された男(当時57)が、市内のフィリピンパブを訪れた一件だ。

男は自宅を出る前、家族に「コロナをばらまいてやる」と発言していた。後に店員の女性の感染が発覚したことなどから、
テレビは繰り返し、男が店内でカラオケを熱唱する様子を放映した。

店は騒動の影響で1カ月近く営業を自粛。多くの従業員が店をやめ、来店客らも自宅待機を余儀なくされた。
経営者の安田知洋さん(45)によると、見込んでいた売り上げ600万円が失われたという。

この店以外にも、事件があった家電量販店やマッサージ店、公共施設などは、いずれも消毒などで一時業務ができなくなっている。

■「ゆがんだ自己顕示欲あるのでは」

愛知県内で「コロナ」発言による逮捕者が多発するのは、県民性に関係があるのか。SNS上では、
「不謹慎な冗談を好む」といった投稿も見られたため、県民性に詳しい経営コンサルタントの矢野新一さんに取材した。
矢野さんは「愛知はものづくりが盛んで真面目な県民性。県民性と事件とは結びつかない」と否定した。

一方、逮捕者は全員が男で、中高年が目立つのも特徴だ。

東京未来大の出口保行教授(犯罪心理学)は、「背景にはゆがんだ自己顕示欲があるのではないか。
国民の不安に乗じてコロナをちらつかせることで、他者に恐怖を与え、それが自分の存在を認識させる手段となっている」と分析。
さらに、「中高年は社会的な評価を最も求める年代。社会に対する恨みを晴らす犯行とも言える」と指摘する。


男が「俺コロナだぞ」と言って職員につばを吐きかける事件があった、愛知県東郷町の施設「いこまい館」
=2020年6月3日午後、同町
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