ハーバード大学の研究者らが、太陽系の外縁を周回しているかもしれないと考えられている「第9惑星(惑星X)」が「原始ブラックホール」か否かを確認するための計画を提案しました。研究者らは、チリに建設予定の可視光赤外線望遠鏡ヴェラ・C・ルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory: VRO)を使って全天を観測することで、謎の天体を発見するとしています。

原始ブラックホールとは、超新星爆発の結果として形成される通常のブラックホールとは異なり、ビッグバンと同時に形成されたソフトボール大ながら地球の5〜15倍もの質量があるとされる超高密度な仮説上の天体。目視できないうえ大質量であることから、暗黒物質(ダークマター)の候補物質とも言われています。

第9惑星が原始ブラックホールだとする仮説は、宇宙を漂っていた原始ブラックホールが太陽の重力に捕まって、他の惑星の大きく外側を公転するようになったのではないかとするもの。

もし第9惑星が原始ブラックホールだとすれば、たとえば彗星のような小天体がそこに接近しすぎたとすると、彗星は強烈な重力で引き寄せられ、星間ガスとの反応で過熱し溶解します。ついには潮汐が破壊され、彗星は粉々になってブラックホールに降着します。そして、研究者はこのときに放出される降着フレアと呼ばれる放射線や可視光を観測できれば、第9惑星(原始ブラックホール)を発見できると考えました。

もちろん言葉で説明するのは簡単ですが、現状ではそれを実行するのは困難です。しかしVROが完成すれば、フレアの発生を逃さず検出できることが期待されます。

もとは大型シノプティック・サーベイ望遠鏡 (Large Synoptic Survey Telescope: LSST)と呼ばれていたVROは超広域観測が可能で、3晩で設置場所から見える全天域を観測できる性能を誇ります。頻度の高い比較的小さな変化を検出する能力が高いため、週に2回の全天観測で降着フレアの検出も可能だと研究者は述べています。

研究者らは、VROが完成し稼働する2023年から観測を開始すれば、1年以内に原始ブラックホールが確認されるか、または第9惑星がブラックホールである可能性が除外されると主張しました。

第9惑星が本当に惑星なのかブラックホールなのか、またそんなものが本当に存在するのかは、誰もが気になるところ。早ければ2023年にはその答えが出るかもしれません。


関連ニュース
未発見の「第9惑星」その正体は小さなブラックホールだとする説が登場
https://sorae.info/030201/20190930-planet-x.html

https://japanese.engadget.com/planet-9-blackhole-harvard-225005140.html