国の持続化給付金事業では、事業の再委託や外注を通じ「丸投げ」や「中抜き」などが行われているとの批判がある。問題を招いた一因は民間委託についての経済産業省の独自ルールの存在だ。これに対しては野党などから「他省庁に比べ事業を受託する企業や団体などを優遇している」との指摘が出ている。批判を受け、経産省はルールの見直しを検討し始めた。 (森本智之、桐山純平)

◆環境、農林水産、法務、厚生労働省には制限
 国の事業を民間に委託する方法については国に統一基準はなく、各省庁がそれぞれのルールで運用している。
 事業の責任が曖昧になりやすい丸投げを防ぐため、財務省は2006年に委託契約の一括再委託を禁止する通知を各省庁に出した。この通知前後、少なくとも経産省内の一部部署には、受託企業などが事業を再委託する際、再委託額を50%以内に制限する運用が存在していた。だが、その後なくなり「100%」に近い再委託も可能になった。
 環境、農林水産、法務、厚生労働の4省は今でも再委託を原則50%以内か未満に制限している。環境省の担当者は「原則として、業務の半分以上は自前でできるところが事業に手を挙げるのが前提だ」と強調した。

◆経産省の事業、外注に回しても利益
 経産省の事業委託には、受注した企業間で利益の中抜きが起きやすいルールもある。事業を別の企業などに外注する際、費用の10%を「一般管理費」として計上し、それを上限に利益を得ることを受託企業などに認める制度だ。持続化給付金事業では、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)からほぼ丸ごと再委託を受けた電通が再委託金額の86%、645億円を子会社4社に外注。外注に回しても「経産省ルール」によって10%の64億5000万円を得られる。
 受託企業が一律で有利になるこうしたルールは、他に13ある中央省庁には存在しない。12省庁は「個別事業に応じ判断する」と本紙の取材に回答。環境省は「外注費から利益を得ることを一切認めていない」と答えた。
 こうした中で経産省は有識者会議で独自ルールの見直しの検討を始めた。梶山弘志経産相は「他省庁との比較、世間一般常識との比較を含め見直したい」と述べ、年内にも結論をまとめる考えを示したが、実効性のある内容になるかは見通せない。

◆分割発注を導入、社名や金額の一部公表も
 経産省の民間委託のやり方については、既に変更された点もある。1日から事務が始まった20年度2次補正予算分の給付金事業では、予算を一度に使い切らない分割発注を取り入れ、委託額を予算のほぼ半分、427億円に抑えた。事業の状況をみながら、その後の支出額を決めるやり方だ。これは1次補正予算分のサ協への発注が一括で769億円に上り、「金額が多い」との指摘を受けた反省だ。
 これまで非公表だった委託事業の情報開示についても社名や金額の一部を公表し始めた。ただ「企業の許可を得られていない」とし、1次補正予算分で受注した63社のうち8割近い48社の名前は非公表のまま。梶山氏は「これも課題なので検討した上で結論を出したい」と述べた。

東京新聞 2020年9月4日 05時55分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/53086