何の期待も、高揚感もない。14日投開票の自民党総裁選は、自民党議員の異様な権力欲を国民に見せつけただけだった。

病気を理由に再び政権をブン投げた安倍首相の「石破にだけは政権を渡さない」という意向をくんで、
二階幹事長が担いだ菅官房長官に主要派閥があっという間に雪崩を打った醜悪な総裁選。

下馬評通り、菅氏が377票(総数535票)をとって圧勝したが、この結果は8日の告示前から、決まっていた。

わずか6日間の短い選挙戦でも、菅のスッカラカンぶりが日に日に露呈。それでも圧勝シナリオは揺るがなかった。
今の権力構造を維持したいベテランと、ポストにありつきたい中堅・若手にとって、都合のいい存在が菅だったのだ。

そういう利害と打算から生まれたおぞましい新政権が発足しようとしている。

見れば見るほど、聞けば聞くほどスッカスカ。連日の総裁選討論会で見せられた菅の振るわない弁舌にア然とした国民は少なくない。

付箋だらけの想定問答集を常に注視し、口を開ければ棒読み。それでいて、「自衛隊は憲法の中で否定されている」と政府見解と真逆な見解を言い出したり、
消費増税に踏み込み、釈明に追われる始末だ。

「聞かせる演説」に定評のある石破と比べるまでもないが、場慣れして伸び伸びと語る岸田との差も開く一方だ。
総裁選の中心人物が泡沫扱いの2人の足元にも及ばないとは「最強の官房長官」が聞いて呆れてしまう。

法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

「説明能力に欠け、スポークスマンに最もふさわしくない人物が歴代最長の官房長官だったことが浮き彫りになりました。
国のトップとしての政策ビジョンはなく、政治手法は強権支配の安倍政権の継承。

国民と内閣を遮断してきた実行役を国のトップに担ごうとする自民党が、いかに腐った政党なのかもよく分かった。
もっとも、野党は腕の見せどころです。これほど分かりやすくアベ政治の醜悪さを凝縮し、独善的な政治家はいないでしょう。
国会で正々堂々の議論になれば、アッという間にボロを出すことになる」

菅は官房長官会見では都合の悪い質問を「全く問題ない」「批判は当たらない」などの常套句ではねつけ、
露骨な嘲笑で批判を押さえつけてきたが、国会審議ではその手は通用しない。

新生した立憲民主党の勢力は、旧民進党の分裂前の規模に迫る。

野党がガッチリ共闘して憲法53条に基づく臨時国会召集を要求し、早々に追い込むしかない。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278678