札幌市内で若年層の新型コロナウイルス感染が拡大している。9月に確認された感染者の約75%は30歳代以下で、繁華街のススキノを中心に感染が拡大しており、同市は感染リスクの高い行為を控えるように呼びかけている。ただ、観光地でもあるススキノの景気は新型コロナの影響で冷え込んでいる。関係者は経済対策と感染防止を両立させながら進めるという難しい対応を迫られている。

■7月以降急増

 「若い方は、マスクを外しての長時間の会話など感染リスクの高い行動を避けてほしい」

 札幌市の秋元克広市長は6日の記者会見で、7月以降、若年層の感染者の割合が急増していると表を交えて説明し、注意を呼びかけた。一方、9月の最後の1週間を最初の1週間と比べると30歳代以下の割合は12・2%減っている。

 秋元市長は「若い方からほかの年代に広がっていることが見受けられる」と指摘。行動範囲の広い若年層から幅広い年代に感染が広まることへの懸念を示した。

 若者の割合の増加に合わせ、ススキノでのクラスター(感染集団)も増えている。5日には接待を伴う飲食店で、過去最大規模の23人が感染するクラスターが判明。今まで確認された8か所のクラスターのうち5か所は9月以降に発生した。市保健所によると、換気が悪い地下や狭いフロアで密集しやすい店が多く、感染が広がりやすいとみられる。

 感染拡大は繁華街に大きな打撃を与えている。

 すすきの観光協会の推計では、5月に約3800店あったススキノの飲食店は、感染拡大による経営悪化などで8月までに約300店が営業をやめたとみられる。

■復活を模索

 低迷が続く状況を打破するため、観光協会は12日から新企画「すすきの結び酒」を始める。期間限定のチケットを購入すると、道産食材のおつまみと飲み物が格安で楽しめる。9月中旬の説明会では、観光協会の担当者が参加店の経営者らに「ススキノを復活させるきっかけになるよう企画した」と力を込めていた。

 参加する居酒屋「牛たん・旬菜 鈴の屋」は、日本酒と牛たんのつまみを用意する。感染拡大後の4〜5月の売り上げは前年の4割程度と激減した。その後はいったん回復してもススキノでクラスターが確認されるたびに客足は遠のいている。

 出張や観光で訪れる人も少ない。席数を減らして客同士の距離が取れるようにするなど対策を講じてはいるものの、来店が1組だけの日もある。経営する深谷仁博さん(47)は「ススキノに来てはいけないという雰囲気がある。『結び酒』が少しでも変えるきっかけになれば」と願う。

 観光協会は「結び酒」を感染防止の意識向上につなげたいとも考えている。説明会では、店に掲示されたQRコードを客がスマートフォンなどで読み取りメールアドレスを登録すると、その店で感染者が出た場合に連絡が届く「北海道コロナ通知システム」を経営者らに紹介し、導入を促した。

 大島昌充会長(67)は「経営が苦しい飲食店を助けるのはもちろん、安心してススキノに来てもらえるようにするため、予防意識を高めることを並行して進めねばならない」と強調した。

10/7(水) 20:31 読売新聞オンライン
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