厚生労働省が9日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、1人当たりの現金給与総額は27万3263円と前年同月比で1.3%減った。新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった4月から5カ月連続で減少した。残業代などを示す所定外給与が1万6617円と14.0%減ったことが響いた。

所定内給与は0.1%減の24万4547円。労働時間は所定内が4.3%、所定外が13.1%とそれぞれ減った。テレワークを拡大したり、休業日を増やしたりする企業が増加しており、労働時間の減少が給与の水準を押し下げた。現金給与総額から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は1.4%の減少だった。

現金給与総額を産業別でみると、飲食サービスが6.2%減と下げ幅が最も大きかった。製造業は3.5%減った。一方、情報通信業は1.5%、不動産・物品賃貸業は4.6%増えた。

パートタイム労働者の雇用環境も一段と厳しさを増している。現金給与総額は9万7447円で1.9%の減少となった。所定外給与は17.5%減だった。パートタイム労働者が全体に占める比率は30.8%ととなり、前年同月から0.67ポイント低下した。

今年は新型コロナの影響により、企業は雇用をぎりぎり維持する一方で、残業時間の抑制を進めてきた。経済活動の再開とともに、景気には持ち直しの兆しも出てきているが、賃金の抑制が続けば、経済を下押しする要因になりかねない。

日本経済新聞 2020/10/9 8:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64800810Y0A001C2MM0000/