米大統領選の開票が3日夜(日本時間4日午前)、東部諸州から本格的に始まった。大票田の南部フロリダ州やジョージア州で大接戦となっており、勝敗の行方は予断を許さない。郵便投票の利用拡大により期日前投票が急増した今回は大勢判明が遅れる可能性もある。


記者団の質問に答えるバイデン氏=東部デラウェア州で2020年11月3日、AP
 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)が南部テネシー、サウスカロライナなど7州、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が東部マサチューセッツ、南部バージニアなど9州で勝利を確実にした。大統領選は全米50州と首都ワシントンに配分された計538人の選挙人のうち、過半数(270)を制した候補が勝利する仕組みで、獲得した選挙人はトランプ氏が55人、バイデン氏が85人となっている。投票総数は2016年の前回選(約1億3800万人)を上回ることが確実となっている。

 トランプ氏は3日午後、陣営のスタッフに謝意を述べるため首都ワシントン近郊の選挙対策本部を訪れた。「今日は素晴らしい日になるだろうが、もっと大事なことは、これから素晴らしい4年間が待っているということだ」と述べ、勝利に自信を見せた。トランプ氏はホワイトハウスで政権幹部らと共に開票を見守る。3日夜には支持者を集めたパーティーも予定している。

 バイデン氏は3日午前から、接戦州の東部ペンシルベニア州の各地で遊説した。フィラデルフィアでの演説では「中流階級を再建する。当選すれば、私は共和党でも民主党でもなく米国の大統領になることを約束する」と宣言。「まだ投票していない人がいれば最後まで呼びかけてほしい」と訴えた。バイデン氏は3日夜、地元の東部デラウェア州で国民向け演説を行う予定だ。

 今回の選挙はトランプ政権の1期4年に加え、世界最多の感染・死者数を出した新型コロナウイルスへの対応の評価が問われた。さらに感染拡大により打撃を受けた経済の回復策や人種差別問題が争点となった。

 コロナ危機を受け、今回は投票所に足を運ばずに投票できる郵便投票の利用が急増。フロリダ大の米選挙プロジェクトの集計によると、3日午後現在で郵便を含めた期日前投票を済ませた人の数は1億人を突破した。

 昨年6月に再選出馬を正式表明したトランプ氏は1期目公約の米国第一主義を踏襲。雇用数値の改善や北朝鮮との緊張緩和など1期目の実績を強調し、貿易不均衡是正や強硬な移民対策のさらなる推進を掲げた。今年春以降のコロナ感染拡大で経済が失速し、再選戦略の見直しを迫られると、危機からの脱却と経済回復をアピールすると共に「社会主義的なバイデン政権になれば大不況が訪れる」と繰り返し訴え、左傾化の進む民主党への批判を強めた。

 バイデン氏は昨年4月、「トランプ政権下で失われた米国の品位と尊厳を取り戻す」と訴え、党予備選への立候補を表明。今年4月に党候補指名を確実にして以降は、「打倒トランプ」を旗印に民主党内の結集だけでなく共和党支持層の一部の取り込みにも成功した。本選ではトランプ氏のコロナ対応批判を繰り返し「トランプ政権はコロナとの闘いをあきらめた」と攻撃した。「密集」もいとわない大規模な支持者集会を強行するトランプ陣営と対照的に、オンラインでの訴えや資金集めが中心のバーチャル選挙を展開した。【ワシントン高本耕太】

https://mainichi.jp/articles/20201104/k00/00m/030/077000c