新年が明けて、再び緊急事態宣言を出すか出さぬかで、菅義偉内閣がすったもんだしているが、昨年9月に発足した際には、コロナ対策の他にも、いくつかの目玉政策があったはずだ。


 その一つが、少子化対策の一環としての不妊治療の保険適用だ。このところ、とんと話題に上らなくなったが、世界に目を向けると、少子化対策に成功している国もある。その代表例が、ハンガリーである。

■ ハンガリーの「コンピューター付きブルドーザー」

 ハンガリーは中東欧のEU加盟国で、人口980万人。面積は日本の約4分の1で、2019年のGDPは世界57位(IMF報告)。2010年に、オルバーン・ヴィクトル首相(57歳)が政権を担うようになってから、西ヨーロッパとは一線を画した独自路線で、何かと注目されている国だ。

 オルバーン首相は2019年の年末に来日し、私はあるレセプションで彼のスピーチを聞く機会があった。オルバーン首相のことを「ハンガリーのトランプ」と呼ぶ人もいるが、私の心象は、「ハンガリーの田中角栄」。まさに「コンピューター付きブルドーザー」という感じで、時折ユーモアを交えながら、統計数字を盛り込んで怒涛のようにスピーチする。外観も性格も、往年の田中角栄首相を髣髴させるのだ。

 オルバーン首相が話題を呼んだのは、2015年に中東や北アフリカから移民・難民が100万人以上、ヨーロッパに押し寄せた際、彼らを真っ先に拒否した時だった。そのことで、人道主義を掲げるドイツのアンゲラ・メルケル首相と対立したが、結局はメルケル首相の方が「敗北」を認める格好となった。

■ GDPの4.7%を投入、「本気」の少子化対策

 ここまでは、よく知られた話だ。ところがオルバーン首相は、単に移民・難民に反対するだけでなく、その代わりに「ハンガリー人を増やす」ということにも、恐るべき執念を燃やしているのだ。

 ハンガリーが少子化対策に充てる年間予算は、GDPの4.7%!  OECD(経済協力開発機構)加盟37カ国の平均は2.55%で、日本は約0.8%しかない。つまり、比率を単純に比較すれば、日本の約6倍だ。オルバーン政権が始動して10年あまり経ったいま、1981年以来、減少し続けてきた人口減に、歯止めがかかり始めたのだ。

 以下、ハンガリーが進めている主な少子化対策を列挙してみる。

 〇4人目の子供を産むと、定年まで所得税ゼロ

 オルバーン首相自身、5人の子持ちで、とにかく子沢山を奨励しようと、昨年1月から、世界のどこにもない「所得税ゼロ」を打ち出した。つまり、4人の子供を産んだ女性は、「ご苦労様、あなたは国家に十分、貢献したのだから、今後は所得税は免除します」というわけだ。

 ちなみに子供1人の場合、月額32ユーロ(1ユーロ≒125円、以下同)、2人の場合は月額60ユーロ、3人の場合は99ユーロが、それぞれ所得税から軽減される。所得税は15%だが、現在、計100万人以上の母親が、これらの恩恵を受けている。また、3人以上の子供がいる家庭は、7人乗り以上の新車を購入すると、7500ユーロの補助金がもらえる。

 〇3年間の有給育児休暇

 日本は原則、子供が1歳になるまでが育児休暇の対象だが、ハンガリーは3歳になるまで認める。子供が生まれる前に親が社会保障に加入していた場合、乳児ケア手当(CSED)が168日間提供される。額は、子供が生まれる前に稼いだ給与総額の7割。

 その後、子供が2歳に達するまで、保育料(GYED)が提供される。額は、同じく7割。2018年には、計10万2512人が受け取った。さらにその後も、子供が2歳から3歳の間、親は85ユーロを受け取れる。

 子供が生まれる前に親が社会保障に加入していなかった場合、子供が3歳に達するまで育児手当(GYES)が支給される。3人以上の子供を持つ母親は、最年少の子供が8歳に達するまで、子育て支援手当(GYET)が支給される。
■ 第三子出産で学生ローンは全額免除

 〇結婚奨励金

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