飲食店向けが中心の食品卸や製造などコロナ破たんが頻発
政府は1都3県に緊急事態宣言を発令する予定で、苦境に陥った飲食店がクローズアップされている。一方、飲食店向けに売上を依存していた食品製造業、同販売業の新型コロナ破たんも84件に達する。再度の緊急事態宣言で、飲食業は再び影響が懸念されるが、そこに営業地盤を築いた食品製造、同販売の実態にも光を当てることが必要だろう。

 2021年1月5日までの「新型コロナ」関連破たん(負債1,000万円以上)は累計850件に達した。このうち、業種別では飲食業が144件と突出して多い。今回の緊急事態宣言の発令では、飲食店に午後8時までの営業時間短縮などを要請することが伝えられている。

 飲食業の不振に引きずられる形で、食品関連(食品製造、販売)の「新型コロナ」関連破たん(負債1,000万円以上)は全国で84件(倒産75件、弁護士一任・準備中9件)を数える。月別では緊急事態宣言が発令された4月10件、5月14件と急増した。飲食店の休業余波で売上が急減、破たんしたケースが目立つ。

「新型コロナ」関連破たんは、最多が飲食業の144件で、個人消費低迷が響いたアパレル関連(製造、販売)82件、建設業68件、宿泊業60件と3業種は、いずれも食品関連の84件を下回っており、食品関連のコロナ破たんが目立ち始めた。

深刻な影響が予想される
 飲食業は、金額の多寡は別にして営業時間短縮などに応じた協力金が支給されるが、食品関連業界はそうした支援も届かず、「新型コロナ」関連破たんが目立つ。

 特に、昨年4月の緊急事態宣言の発令後、4月から5月に経営破たんが急増した。また、忘年会需要が消失し、稼ぎ時に売上高が落ち込んだ12月に再び増加に転じた。このように食品関連の企業は、もともと自己資本が脆弱で業績変動への耐性が弱いことを示している。年末年始の業績が落ち込む中、緊急事態宣言が発令されると食品関連の企業は深刻な試練に直面することになる。

 首都圏の食品卸会社の担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「前回の緊急事態宣言時は(飲食店向け)売掛金回収が遅れたケースが目立った。再発令でまた売掛金の回収が心配だ」と飲食業への打撃を気にかけた。

 これまで時短営業の要請エリアから外れた首都圏の一部地域は、遅くまで営業している飲食店も多かった。しかし、緊急事態宣言が発令されると該当地域のすべての飲食店が午後8時までの営業になる予定だ。年始の新年会、成人式など、季節的な需要の多くが消失する可能性が高い。飲食店を対象に食材を納品している食品製造、同卸売の会社にも深刻な打撃が及ぶことが危惧される。また、食品小売も午後8時以降の外出自粛が要請されると影響は必至だろう。

 食品関連の業界でも、個人向け需要は巣ごもり需要で堅調に業績を伸ばす一方、飲食店向けは厳しい業績と二極化が進行している。だが、食品関連業界の経営悪化は、巡りまわって消費者に影響が出ることになる。緊急事態宣言の影響を受ける飲食店だが、支援はその周辺業界にも幅を広げることも検討すべきだろう。

1/6(水) 15:40
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