中東のエジプトが誇る世界遺産「ギザの3大ピラミッド」。このうち最も大きいクフ王のピラミッドは高さ約140メートル、40階建てのビルに相当します。スフィンクス像を従えたその壮大な景観を見ようと毎年、世界各地から多くの観光客が訪れてきました。しかし、ことしは新型コロナウイルスの影響で、ピラミッド観光も大きく様変わりしていました。
(カイロ支局 山村充)

■家族同然だったラクダを

「新型コロナのせいで、ラクダが飼えなくなった」

こう嘆くのは、イブラヒム・フィクリさん(51)。ピラミッド周辺で40年近く、ラクダ乗り体験を観光客に提供する仕事に携わってきました。

ことしは、これまでで最も観光客が少ないと言います。収入は5分の1にまで減少。食費を切り詰めるなどして家計をやりくりしていましたが、1日1000円ほどかかるラクダ3頭のえさ代が、徐々に重くのしかかるようになりました。

思い悩んだ末、家族同然に大事にしていた3頭のうち2頭を、10月に食肉業者に売る決断をしました。妻と子どもたちを養うため、背に腹は変えられなかったと振り返ります。