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https://news.yahoo.co.jp/articles/9e44b828f893309a0eef2d8f0a0fbfe7285d45c6?page=2


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印刷用紙に特殊な金属箔

かつて日本企業から技術を貪欲に奪い取ったサムスンが、技術を奪われる側に回る。ただサムスンも手をこまぬいているわけではない。

「飲み会の店の地図を印刷しただけなのに」。サムスンの研究所に勤める男性技術者は、退社時にゲートで警備員に呼び止められた。問題視されたのは会食場所の地図を印刷した紙だった。社内の複合機で使う印刷用紙には特殊な金属箔が埋め込まれ、探知機が反応する仕組み。社員が無断で技術情報を印刷して持ち出せないように導入された。

研究所や工場内で従業員のスマホの撮影・録音機能を無効化するのは当たり前。印刷用紙にまで漏洩防止策を講じ、社員を介した情報流出防止を徹底する。新型コロナウイルスの感染拡大にともなって韓国政府が在宅勤務を推奨した際にも、サムスンは技術情報の持ち出しを伴う在宅勤務は認めなかった。

ただ、どれだけ対策を徹底しても、世界で28万7000人の社員一人ひとりの行動を縛るのはできない。端的な例が転職だ。

「勤務地=中国内陸部、応募要件=ディスプレー関連企業出身者」――。韓国の求人サイトには、こんな文言が並ぶ。なかには「S社L社優遇」といった文言もある。Sはサムスン、L社はLGを指す。「3年間、年俸3倍」といった厚待遇で引き抜かれるケースも少なくない。激しい出世競争に脱落した技術者らを狙ってのスカウトも横行する。

中国最大手のパネルメーカー、京東方科技集団(BOE)内部の技術者によると、同社の工場や研究所には計120人ほどの韓国人が在籍する。サムスン出身の技術者も50人程度が加わっており、米アップル向けの有機ELパネル開発を主導する。彼らの多くが15〜16年の業績不振時にサムスンを去った技術者たちだという。

その結果、BOEの成都工場には、韓国・牙山(アサン)市のサムスンディスプレー主力工場と同じ「コピーライン」が並ぶ。中国政府の補助金を使って買い集めた日本製の装置も多い。現在はiPhone向けの有機ELパネルの量産準備を進めており、本家サムスンのシェアを脅かす存在となっている。

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