政府の「変異株検査率40%」に「非現実的」「達成は無理」 県内自治体から困惑の声

 新型コロナウイルス感染者から変異株が検出されるかを調べる抽出検査について、それまでの5〜10%から「40%」に上げた政府の新方針を巡り、神奈川県内自治体から「非現実的だ」「達成は無理」との声が上がっている。背景には、PCR検査に使う試薬不足や厳しい財政状況があり、「そもそも40%の数字に意味はない」との批判も出ている。 (志村彰太、吉岡潤、安藤恭子、村松権主麿、曽田晋太郎、丸山耀平)
 県によると、八〜二十二日の感染者のうち、変異株の抽出検査をしたのは県内全体で13・9%。抽出検査は県と独自に保健所を持つ六市がそれぞれ行う。本紙が県と六市に聞き取りをしたところ、検査率が最も高いのは相模原市の25・8%。横浜市は5%で、川崎市と藤沢市はまだ着手していなかった。
 変異株検査は通常のPCR検査とは異なる試薬を使う必要があり、政府の方針を受けて全国的に品薄で入手困難という。検査経費の半額は県と市がそれぞれ負担するため、各自治体の財政状況の違いも影響する。
 県と六市はPCR検査の多くを民間委託しており、変異株検査も同様。県医療危機対策本部室の山田佳乃担当課長は「行政と違い、民間には『増やして』と言ってすぐに実現できるものではない」と話す。予算や試薬を別途確保しないといけない上、件数をすぐに把握できる体制もできていないという。
 ある市の担当者は「そもそも40%の根拠が不明」と疑問を呈す。別の市も「40%は無理があるし、ナンセンス」と批判。「変異株の流行状況を調べるなら10%で十分だし、封じ込めを狙うなら100%でないと意味がない。国は何をしたいのか」との声もあった。
 とはいえ、国の方針には従わざるを得ず、横浜市の船山和志・健康安全医務監は「どのようにやれば達成できるか検討したい」と話す。県の山田担当課長も「国が示した以上、できる限り目指す」とする一方、「実現するには課題が多すぎる」とも指摘した。

東京新聞 2021年03月28日 07時10分
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