政府と東電は、福島第一原発で保管する処理水を放出してタンクを解体することで「新たに必要となる施設の敷地確保につながる」と主張する。だが実際には汚染水の発生をゼロに近づけない限り、タンクを解体していくのは難しい。

 現在、構内にはタンクが約1000基あり、約125万トンの処理水が保管されている。現状のタンク整備計画では容量の余力は約12万トンしかない。処理水の放出が最も早い想定の23年から始まったとしても、その前に満杯になる見通しで、解体どころか増設が必要になる。
 政府の基本方針では、処理水は30年程度かけて放出する。単純計算で年間の放出量は4万6000トン程度となる。
 一方、福島第一では今も1日約140トンの汚染水が発生。これが浄化処理されるので、年間で約5万1000トンの処理水が発生し、想定される放出量を上回る。台風や集中豪雨があれば汚染水はさらに増えるため、処理水の保管に余裕を持たせる必要も出てくる。
 東電は4年後の25年中に、汚染水の発生を1日約100トンに抑える目標を掲げる。達成できれば、年間の処理水は約3万6500トンと放出量を下回り、タンクの容量も年間9500トンの空きができる。タンクの多くは1基の容量が約1000〜1300トンで、年間で最大9基を解体できる計算だ。(小川慎一、小野沢健太)

福島第一原発の処理水 1〜3号機では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)への冷却水と、原子炉建屋内に流れ込んだ地下水や雨水が混ざり汚染水が大量に発生し、多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化してからタンクに保管。技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれ、約7割は浄化が不十分でトリチウム以外の放射性物質が国の排出基準を超えて残るため、東京電力は放出前に再浄化する。トリチウムの放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出。トリチウムの放射能は約12年で半減する。

東京新聞 2021年04月16日 20時49分
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