新型コロナウイルスの感染拡大を受けた3度目の緊急事態宣言が25日、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県で発令された。東京では商業施設や百貨店で休業措置が取られたが、路面店や飲食店の多くは営業を続け、人出の目立った減少は見られなかった。酒類の提供を続けて繁盛する店もあり、要請に従った店から不満が漏れた。電飾看板などを消すよう求めた「消灯令」は、繁華街では徹底されなかった。

 午後8時を過ぎると、街の明かりが徐々に消え始めた。ただ、東京のランドマークであるスカイツリーや東京タワーの照明は落とされたが、繁華街のネオンやイルミネーションはまちまち。小池百合子都知事は「人の流れを抑制するための措置」として街灯以外の消灯を求めたが、こうこうと光り続ける看板も目立った。
 緊急事態宣言初日。西村康稔経済再生担当相は記者会見で「1年前を思い出し、徹底したステイホームをお願いしたい」と述べたが、期待通りに人出が減ったとは言い難い。

 酒類を提供する店に休業を求めたことで、昼から安価で飲める店の多い“センベロの聖地”赤羽の飲食店街では、シャッター街になった一角もあった。ただ「酒を出さなきゃ経営が成り立たない」と営業した店の前には入店待ちの“センベロ難民”があふれた。

 焼き肉店「元祖ホルモン酒場」の岡野裕輔店長は「お酒を出していないと知ると団体客が帰ってしまった」と厳しい表情。「お酒を出す店の事情も分かるが、もし隠れて出して協力金をもらうつもりなら許せない」と語気を強めた。

 別の店の従業員によると、これまで時短要請に従わない店を近隣の店が通報するケースがあったそうで「酒とバレないよう、グラスにストローを挿してソフトドリンクを偽装する店もあるらしい」という。

 JR上野駅近くの繁華街は、酒類販売を続けたり持ち込みを認める店がにぎわった。御徒町駅前通りにある居酒屋の店長は「ウチはノンアルコール飲料を出しているが、同じビルで酒を出す店に客が流れた。真面目にやるとバカを見る」とやりきれない表情でガラガラの店内を見つめた。

 酒店は多くの人が訪れた。銀座「君嶋屋」の店長は「飲食店に提供する分が大幅に減ったが一般客が多く、普段とそれほど変わらない売り上げになりそう」と胸をなで下ろした。店内に設けたスタンディングバーは休業。路上飲みする人が酒店やコンビニで酒を購入する懸念については「自分の首を絞める行為なので、できれば家で楽しんでほしい。酒に罪はない」と訴えた。

 JR新橋駅前では午後8時すぎ、薄暗いSL広場で路上飲みを始める人たちがおり、新宿・歌舞伎町でも同様の姿が見られた。「消灯令」も「禁酒令」もグズグズ。感染拡大が収束に向かうかは闇の中だ。
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