https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210427/dom2104270002-n1.html
東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象にした新型コロナウイルスの緊急事態宣言は、
今回で3度目となる。正直言って辟易(へきえき)している住民も多いのではないか。

もともと日本には、世界で当たり前の「非常事態宣言(戒厳令)」が存在していないため、
個人に対して強制力のある行動制限はできない。このため日本では「緊急事態宣言」にとどまっている。

日本で「感染第4波」と騒いでいるが、人口当たりの感染率を世界で比較すると、
元厚生労働省技官の木村盛世氏は「さざ波」レベルだと指摘している。
実際のところ今の日本は、ワクチン接種が進んで収束しつつある英国と同程度の水準だ。

この意味で、日本の「緊急事態宣言」は、世界からは奇妙に見えるだろう。
今回も個人に強制力はないが、その分、飲食店や商業施設、イベントなどの事業者にしわ寄せがある。
筆者は本コラムで一貫して書いてきたが、休業要請するなら補償措置は当然である。

2020年度補正予算では、資金使途自由の地方創生臨時交付金を地方自治体に約4兆5000億円計上したが、
ほかにも事業者に対する協力金を地方自治体から給付するため、予備費(協力要請推進枠等)として約3兆3000億円も計上した。
21年度予算でも、予備費に5兆円計上したので、当面地方自治体が休業補償するには困らないだろう。
さらに必要ならば、今年度も補正予算を組むことができる。
東京都は他の地方自治体とは異なり、財政余力がたっぷりあるので、独自に休業補償を行えばいい。

それにしても、新型コロナでのマスコミのあおりはひどい。
日本のワクチン接種が遅れている理由は「厚生労働省が副反応の責任を取りたくなくて及び腰だったから」とか、
「この状況では東京五輪どころでない」といった意見も少なくない。

だが、これはミスリーディングだ。日本のワクチン接種率は世界の中でも低いが、それは日本の感染率が低いからだ。
感染の度合いを加味して順位を出すと世界の中で平均的になる。

ワクチンの供給は原則として感染がひどい国・地域から行われている。
データ入手可能な世界84カ国で、日本は71位と下位であるが、感染の度合いを加味すると、日本は45位だ。
感染が少ないのに、人口の多い日本がワクチンを大量に集めたら、世界から批判を受けてしまうだろう。
一刻も早くワクチンを確保してもらいたいのが人情だが、カネにものを言わせず、ワクチン格差に加担しないのは、
奥ゆかしい日本らしいスタンスとの見方も可能だ。

 メディアがワクチンの副反応をあおっておいて、「厚労省が及び腰」というのはまさにあおりの典型だ。
それを言うなら、マスコミがワクチン副反応をあおったために、日本では集団接種ができなくなって、
今回自治体にノウハウがなく困っていると正確に伝えるべきだ。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、
日本の緊急事態宣言は、感染拡大予防のための措置で五輪の開催に関係ないと言ったのも当然だ。