日本出身の海外で活動するジャーナリストは、住んでいる国や日本の新型コロナウイルス対策をどうみているのか。このほど出版された「コロナ対策各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)の著者たちに採点してもらった。居住国への評価はさまざまだが、日本については辛口の意見が相次ぐ。(北川成史)

◆ニュージーランド、ベルギーは高評価 ドイツも「合格点」

欧米とニュージーランド(NZ)に住む7人の著者のうち6人が答えた。

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早い段階の国境封鎖などで感染者を約2600人(27日現在)に抑え込んでいるNZ。クローディアー真理さんは政府対応に「100点満点で80点」と高得点を与えた。

アーダン首相が専門家と毎日会見を開催。科学に裏付けられた情報を流し、国民の連帯を促したことをプラス評価する。長引く国境封鎖による経済への打撃は減点材料とした。

検査態勢の整備を早期に進め、欧州の中でコロナ対策の優等生とされたドイツ。周辺国と同様、最近は変異株への対応に悩む。

田口理穂さんは「政府への信頼度はロックダウン(都市封鎖)の長期化やワクチン接種の遅れで低下している」としつつ、事業主らへの補償制度や医療態勢が整備されていることから「まあ合格点」と評価した。

ベルギーは日本と比べ人口は1割以下の約1150万人だが、コロナによる死者は2万4000人を超え、2倍以上になっている。

ただ、栗田路子さんは「対策の過ちを認め、PCR検査や医療資源の確保を猛烈な勢いで実施した」として「80点」と採点。NZと同様、デクロー首相らが透明性を大切に、科学的かつ自分の言葉で説明しようとする姿勢にも高評価を与えた。

◆フェイクニュースあふれた米国…英国、そして日本は?

米国は感染者が世界最多で3000万人を超えた。片瀬ケイさんは「トランプ政権はフェイクニュースで市民を分断し、公衆衛生の観念が崩れた。マスク着用が政治的立場を示す道具と化したのは最悪」と批判。「感染者を悪者にしない市民の意識」をプラスとしたが、全体は「20点」とした。

英国の冨久岡ナヲさんは「役に立たない接触追跡アプリなどへの支出は零点。コロナを理由に権威主義に傾いているのは20点。政府に助言する科学者に派閥ができたのは30点。政府直轄組織をつくり迅速なワクチン接種を始めたのだけ100点」と細かく採点した。

日本については「国民に我慢を強いる根性論」(田口さん)、「対策が観念的」(片瀬さん)など総じて評価が厳しい。

スウェーデンの田中ティナさんは「完全なロックダウンをせず、自主性を促すのは似ている。ただ、根拠に基づく説明をしているか、日本は見えにくい」と両国の違いを説明する。「欧米で日本の影は薄くなり、あまり興味を持たれていない」(栗田さん)と寂しい指摘もあった。

2021年04月28日 12時00分
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