福岡県で28日、新型コロナウイルスの新規感染者数が400人を突破して過去最多を更新した。同県では22日から地域を絞って飲食店への営業時間短縮要請を始めているが、感染力が強い変異株が主流となる中で封じ込めにつながるか不透明感が増している。病床使用率も急上昇しており、より強力な措置の必要性を指摘する声も強まっている。

 感染急拡大の要因は変異株だ。県の抽出検査によると、4月初めまでは陽性者に占める変異株の割合は1割だったが、中旬までに5割に増加し、19日からの1週間では8割が変異株に置き換わった。

 変異株の勢いに合わせるように感染者数も急速に拡大。4月14日に約2カ月半ぶりに150人を突破すると、その2週間後の28日には約3倍となる440人に達した。

 県は、20日から県民に対して不要不急の外出自粛を求め、22日からは福岡市、25日からは久留米市を対象に時短要請を始めたが、効果が見えるのは2週間後。ある医療関係者は「爆発的な感染を防げるか今が正念場。大阪みたいにならないように先手を打つ対応が不可欠」と指摘する。

 服部誠太郎知事は28日の記者会見で、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の必要性について「今の対策の効果を見極めたい」と従来の見解を繰り返した。ただ、27日時点の病床使用率は49・4%で2週間前から26ポイント上昇。政府の対策分科会が示す指標でステージ4(爆発的感染拡大)となる50%に迫っている。

 北九州市立八幡病院の伊藤重彦院長は「これまでの対策では間違いなく感染が広がる。何より県民の感染防止への自覚をもう一度喚起することが大切。会食時間やアルコール提供の制限強化も有効な手段だ」と話した。 (黒石規之、御厨尚陽)

西日本新聞 2021/4/29 6:00
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