カナダ南東部で、未知の脳疾患患者が次々に確認されている。致死性の高いクロイツフェルト・ヤコブ病と症状が似て、
記憶喪失、視覚障害、痙攣などの症状がみられるが、原因も治療法も明らかになっていない。早い進行に、患者は大きな不安を抱えている。

■半島で発生する致死性脳疾患

米紙「ワシントン・ポスト」によると、カナダ南東部のニューブランズウィック州では、未解明の脳疾患に48人が罹患し、うち6人が死亡した。
感染したのは、18歳から85歳までの幅広い年齢層の人々で、多くが2018年以降にその症状を確認されている。人口80万人に満たない同州のアケイディア半島に患者は集中している。
この脳疾患の症状は、不安や抑うつ、筋肉の痛みや痙攣などから始まる。睡眠障害や視覚障害も発症し、脳は萎縮する。
目のかすみ、記憶障害、歯ぎしり、抜け毛、平衡感覚の喪失などを経験する患者も少なくない。また、筋肉の萎縮が起こる人も、急速に体重が減少する人も、ひどい幻覚を見る人もいる。

病気は急速に進行しうるので、患者も明日何が起きるかわからない。

これらの症状は毎年100万人に1人の割合で発症するクロイツフェルト・ヤコブ病と非常に似ているが、クロイツフェルト・ヤコブ病の検査では陰性になる。
1990年代にイギリスを中心に発生した狂牛病の病原体を摂取した人は変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病に苦しんだことで有名だ。

同州の神経内科医アリア・マレロは、この謎の脳疾患の症状を持つ患者を何年にもわたって診てきたが、同様の症状を持つ患者が年々増えていたことに気づいた。
クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病では、脳内のタンパク質が異常をきたし、中枢神経系で正常組織が破壊され、脳は小さな穴が開いたスポンジのような状態になる。

現在、カナダや世界各国の科学者や医師たちは、この脳障害の原因を解明しようと競っている。
カナダ健康研究所を率いる神経学者のマイケル・ストロングは、「特徴的な症状の急激な変化は、これまでに見たことがないものだ」と述べる。

■病気の原因は未解明

研究者たちは、病因を解明するために、ある環境や動物との接触、旅行歴、食生活など、広い視点から手掛かりを探している。
水や食べ物、環境によって引き起こされている可能性もあるという。

患者は、神経症状を引き起こすことが知られている感染症の有無を血液検査で確認され、他にも自己免疫疾患、代謝異常、がん検査、遺伝子検査を受けているが、答えは出ていない。

現在指摘されている可能性は、この脳疾患が新しいプリオン病によって引き起こされるというものだ。また、環境有害物質が引き起こしたという可能性も指摘されている。
アオコによって生成される毒物が引き起こした可能性もある。カナダでは、かつてある藻類から発生する酸によって魚介類の毒素汚染事件が起きている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dc0d95c39fcc002053f2fe6805024a306264fb21?page=1