<中国政府はシノファームのワクチンを積極的に国外に送り出しているが、この発言からは隠し切れない問題が見えてくる>

中国は新型コロナウイルスの国産ワクチンを諸外国にばらまく「ワクチン外交」を展開しているが、中国製ワクチンの有効性に疑問を呈する声は少なくない。

そしてどうやら、中国政府も国産ワクチンの問題に気付いているらしい。
4月10日の国内の会議で、中国疾病対策予防センターを率いる高福主任が、「現行ワクチンの防御率は高くない」と認める発言をしたのだ。

中国の政府関係者が公の場で自国の産品の品質に問題があるのを認めるのは異例だ。

このとき高は、有効率の低さに対処するため、異なるワクチンを併用して接種することを公式に検討しており、
接種間隔や接種回数の調整なども選択肢の1つだと述べた。

中国政府はこれまで、mRNAを用いた最先端のアメリカ製ワクチン(ファイザーとモデルナの製品)の信頼性に疑問を投げ掛け、自国のワクチンを誇ってきた。
だがアメリカ製ワクチンの有効率の高さが各地で示されると、今度は自らmRNAワクチンの開発に乗り出している。

高の発言は、こうした風向きの変化を反映しているといえそうだ。

件の発言は瞬く間にSNS上に広がったが、中国国内ではすぐに検閲の対象になった。
「有効率が問題だと中国政府関係者が認めたのは初めてだった」と米シンクタンク外交問題評議会の医療問題担当シニアフェロー、黄厳忠は言う。

そもそも、どの中国製ワクチンも治験の最終的な結果は公表されていない。

チリでの中国のシノバック製コロナワクチンの有効率を調査した研究によると、
1回接種を受けた被験者の有効率は3%、2回接種でも約56%だった。

なお中国のシノファームは、自社製ワクチンの2回接種後の有効率は79%だとしている。

世界中に発言が広まった後、高は共産党系の新聞「環球時報」で、自分の発言をめぐる報道は「完全な誤解だ」と語るなど、火消しに追われた。
「ワクチンの有効性は高いときもあれば低いときもある。どうやって有効性を高めるべきかを世界中で考えるべきだ」。
高はこうも述べたが、後の祭り。最初の爆弾発言を打ち消すほどの力はない。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96479.php