【マテセボAFP=時事】バルカン半島の小国モンテネグロ。静かな村の頭上を走る真新しい高速道路が、山腹のトンネルに消えていく。≪写真は中国の援助を受け、モンテネグロ南部の港町バールで建設中の高速道路の一部≫
 ここは、中国からの資金に頼る10億ドル(約1100億円)規模の大工事の起工部だ。この事業のために同国の経済は危機に直面している。
 モンテネグロ政府は中国からの融資のうちすでに9億4400万ドル(約1030億円)を、工事の第1区間である41キロの完成に費やしてしまった。世界で最も高価な舗装道路区間の一つと言える。
 そして残る約130キロを完成するには、少なくとも10億ユーロ(約1330億円)が必要とみられている。
 中国人労働者たちが6年がかりで硬い岩盤にトンネルを掘り、山間部や峡谷にそびえ立つコンクリートの橋脚を建ててきたが、道路は文字通り行き先が見えない。
 「立派なものが建ったが、ここで終わるわけにはいかないでしょう」と語るのは、マテセボ村で引退生活を送るドラガンさん(67)。「まるで高級車を買って、車庫に入れっぱなしにしているみたいです」
 未完成の区間の資金調達、建設による環境破壊、発注絡みの汚職疑惑といった問題が指摘されているが、地元住民は工事の恩恵を強調する。
 「土地が売れて、出て行った人もいます」と匿名で取材に応じた村民が語る。自宅脇には片側2車線の高速道路を支える巨大な橋脚が出来上がっている。「野菜やニワトリが作業員に売れました」。工事現場から出た土砂の山によって、川の氾濫も止まったと言う。

■深刻な資金切れ問題
 マテセボと首都ポドゴリツァ近郊の町を結ぶ最難関の区間は、11月に開通する予定だ。
 計画では、道路は南部アドリア海沿岸の港町バールと北部のセルビア国境をつなぎ、さらにセルビアが自国の首都ベオグラードまで延ばすことになっている。
 だが、そのための資金をどこから得るのか、そして国内総生産(GDP)49億ユーロ(約6530億円)のモンテネグロがすでに中国に負っている債務をどうやって返済するのかは不明だ。
 AFPが閲覧した契約書によると、返済できなかった場合、モンテネグロは主要インフラの管理権を中国へ譲らなければいけない可能性がある。
 中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の下、小国に払いきれない借金を負わせているとして広く批判されている。

https://sp.m.jiji.com/article/show/2576206