「NHKのBSデジタル放送を見ていないのに、受信料を要求された」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、福岡市の男性から投稿があった。NHKの営業員からは「配線を変えたら映る」と迫られたという。見たくなくても視聴できる環境であることから「受動喫煙」になぞらえ「受動受信」と言われ、2007年に始まった総務省の会議以降、問題視されてきた。有識者は「BSは付加的なサービスで民放との違いがはっきりしない。受信料支払いの根拠が不明確だ」と見直しを求めている。

「アンテナと、チューナー内蔵のテレビがあるなら支払うように、との一点張りだった」。投稿した男性は、営業員から迫られた時のことが忘れられない。

14年、BS放送の共用アンテナがある集合住宅へ転居。壁面のテレビ端子からテレビの地上波用端子につなぎ、BS放送は全く見ていない状態だった。ところが17年になり、訪れた営業員から「壁面の端子から分波器でテレビのBS端子につなぐと視聴できる」とチラシを見せられ、支払いを求められた。男性はその後、一戸建てに転居したが、当時の受信料の請求が今も届いているものの、納得がいかずに支払っていない。

放送法64条は「受信設備を設置した者は(中略)契約をしなければならない」と規定。1950年施行当時から基本的に変わっていない。これを根拠に、視聴者が意図せずにBS受信環境が整っている場合も、支払いが求められている。

■ 対応テレビ普及、稼ぎ頭に

NHKにとって、89年にスタートしたBS放送は今や“稼ぎ頭”だ。

放送開始当時、視聴者は自らパラボラアンテナとBS対応のチューナーを取り付け視聴していた。しかし、現在は対応チューナー内蔵のテレビが標準化。共用アンテナのあるマンションも増えた。テレビを設置した場合、いや応なくBSの受信環境が整ってしまう。

こうしたこともあり、地上波とBSを合わせた契約数は2016年度、地上波のみの契約を上回った。NHKは、職員の不祥事が相次いで発覚した04年以降に支払い拒否が急増したものの、BS契約の増加もあり20年度の受信料収入は05年度比で14%増えている。

■ 与野党も問題視

「適切な措置が講じられるべきだ」。総務省が07年に設置した有識者会議「公平負担のための受信料体系の現状と課題に関する研究会」は、BSの受信料制度の在り方を主要テーマとして取り上げ、当時からその見直しは課題となっていた。菅義偉総務相(当時)の提案で設置された会議だった。NHKは「さまざまな観点からしっかりと検討していきたい」としていた。

ところがその後に進展はなく、18年に再び衆議院総務委員会で取り上げられた。長年問題を指摘してきた立憲民主党の寺田学氏は「放置され続けてきた」と追及。それでもNHKは「引き続き検討を進めたい」と11年前と同じ答弁だった。研究会は「BS放送はスポーツ中継や映画の視聴が多く、地上波とは違う付加的なサービスではないか」などと指摘した。公共放送とは言いにくくなっており、受信料支払いの根拠が明確でないというのだ。

寺田氏は取材に「BSがNHKの大きな財源となっており、見直しづらくなっているはずだ。ただ、BSは付加的サービスであり、(料金を支払った人のみが受信できる)スクランブル化も十分検討するべきだ」と強調する。

同じように前総務相の衆院議員、高市早苗氏(自民)も強く批判する。総務相を退任する直前の20年9月、自身のブログで「NHK改革は絶対に必要だ」として問題を取り上げ、「BS受信料は、撤廃を含めた引き下げが必要」と指摘。退任直後にも、受動受信が若年層や高齢世帯に重い負担だとして「受信料引き下げの実現を切望する」と訴えていた。

本紙ウェブサイトで受動受信問題を取り上げたところ、1000件を超える「共感」の意見表明があった。具体的なコメントやアンケートへの回答も100件以上寄せられ、同様の経験をしたとの不満が多数あった。北九州市の20代女性は「見てるなら払うけど、人が稼いだお金を簡単に考えすぎ。あり得ない」とつづった。

共感が集まった投稿として「NHKは努力していません。BS放送はスクランブル放送にすれば済むのに」などとあった。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4b30acb0ec323f398d6a85a5333e7788b72ac9c0