都内のコロナ自宅療養「入院すべきなのにできない」
枝松佑樹、編集委員・辻外記子

自宅療養者の推移(厚生労働省まとめ)
新宿ヒロクリニックの英裕雄院長
鈴木央医師
 「必要な入院ができなくなってきた」。新型コロナウイルスの感染拡大とともに、首都圏を中心に自宅療養者が増え、在宅医から悲痛の声が上がっている。このままでは、働き盛り世代のコロナ患者を自宅でみとらざるをえない事態もでてくる。

酸素飽和度89%でも入院できず
 自宅療養中の患者を9日時点で約60人フォローする新宿ヒロクリニック(東京都新宿区)。英(はなぶさ)裕雄院長(60)によると、区保健所からの往診やオンライン診療などの依頼件数は、7月後半から急増したという。

 8月上旬には、60代男性が40度の高熱をだし、血中酸素飽和度(血液中の酸素の量)が89%に低下。往診し保健所と相談のうえ、入院が必要だと救急車を呼んだ。

 男性の搬送先は、約4時間たっても見つからなかった。持病もあったが、やむなく自宅で酸素投与を始めた。3日目にようやく入院できた。

 「酸素投与をする自宅療養者は、うちだけで5人ほど。いまは若い人も悪化しやすく、20代の方もいます」と英さんは言う。

政府方針と異なる現実
 政府が「第5波」の感染拡大をうけて先日出した、感染急増地域での患者療養の方針は、「入院は重症患者、中等症患者で酸素投与が必要な人、酸素が不要でも重症化リスクがある人に重点化」するとしている。

 入院させるか迷う場合もあるが、最終的には医師が判断するとし、誰もが必要な医療が受けられるようにするための対応という。

 だが現実は、酸素が必要で医師が入院すべきだと判断しても、すぐには入院できない事例がすでに増え始めている。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASP8B5RDSP8BULZU007.html?iref=sptop_7_01