新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生活に困窮しながらも、支援の手が届きにくい若者や外国人らを支える活動に、休眠預金を活用する動きが広がっている。
こうした支援活動を行うNPO法人などはコロナ禍で収支が悪化しており、さらに役割を増している。

「ヘルパーさんはお母さんみたい。悩みも安心して相談できる」――。
8月上旬、京都市内のマンションで一人暮らしの女性(25)は、孤立支援に取り組む事業所「わをんソーシャルサポートシステム」(京都市右京区)の訪問ヘルパーと台所に立った。
2人でたわいない会話を楽しみながら、野菜いためなどを作った。

女性は昨年、体調を崩して離職。コロナ禍で再就職先を見つけるのは難しく、生活は困窮。食費を切り詰めるようになり、引きこもりがちになった。

心配した知人の仲介で、昨年6月から週2回、ヘルパーに食品や日用品を届けてもらったり、一緒に料理したりするように。
女性は「ひとりじゃないと思えることで、気持ちが晴れる気がする」と感謝する。


事業所は休眠預金から昨年度約1500万円の助成を受け、障害や引きこもりなどで孤立しやすい約50世帯に無料で食事を届け、ヘルパー派遣も行っている。

昨年10月には更に約500万円の助成で地域交流のカフェをオープン。
子ども食堂を開き、コロナ禍でアルバイト先が見つからない学生に有償で学習支援の講師を任せている。

桜庭葉子代表(45)は「コロナ禍で困窮する人の孤立が加速している。寄り添い、支える活動が必要だ」と訴える。


コロナ禍による活動自粛などの影響で、ボランティア団体やNPOの収支は悪化。このため政府は休眠預金による助成を拡充し、活動を後押ししている。

子どもの心を育む活動に取り組むNPO法人「こども未来ネットワーク」(鳥取県倉吉市)は今年初めて約180万円の助成を受け、活動のオンライン環境を整備。
3月にはオンライン演奏会を開催した。担当者は「コロナ禍という理由で、子どもたちの出会いや可能性を閉ざしてしまいたくなかった」と助成に感謝する。


岡山市のNPO法人「メンターネット」は今年2月、コロナ禍で母国に帰れず経済的に困窮する外国人シングルマザーらが低費用で入居できるシェアハウス「ミームテラス」を開設した。助成金約360万円が原資だ。

部屋には冷蔵庫や洗濯機などもあり、光熱費込みで週7000円。岡崎博之理事長は「コロナ禍の在留外国人支援は経験がなく、手探りの部分が多いが、活動を通して必要な支援を見極めていきたい」と語る。


休眠預金は19年度に金融機関から預金保険機構に1457億円が移された後、一般財団法人「日本民間公益活動連携機構(JANPIA)」が公募で選んだ資金分配団体を通して、事業を行うボランティア団体や非営利組織(NPO)に配られる。

JANPIAによると、19年度以降、子どもや若者の支援、地域活性化などに取り組む団体への支援に21年度までに計約100億円を用意。
さらにコロナ禍で収支が悪化した団体などのため、コロナ対応の支援枠(19年度は10億円、20、21年度は各40億円)を設け、順次助成を行っている。


 ◇ 休眠預金  

預金者が金融機関の口座の存在を忘れるなどして、10年以上放置された預金。毎年約700億円ずつ発生しており、元々は金融機関の収入として計上されていた。ただ、預金者はいつでも払い戻しができる。

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2021/09/13 15:00
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