9月の自民党総裁選で岸田文雄氏に完敗した河野太郎氏が、捲土(けんど)重来を期そうと再始動した。10月下旬に控える衆院選を前に、多くの議員から遊説のラブコールが絶えず、総裁選で自身を支援しなかった議員の応援にまで飛び回っている。総裁選の1回目の投票では、国会議員票でまさかの3位に低迷し、党内での足場固めが課題として浮き彫りになった。選挙の顔として再び存在感を示し、党内で浮上するきっかけをつかめるか。今回の衆院選は、その試金石となる。【堀和彦】

 「共産党(の手法)は、一歩でも靴をドアの中に入れたら、こじ開けてその家を乗っ取る。それが世界中の共産主義国家のやり口、スタートだ」

 岸田氏が国会で所信表明演説を行った10月8日夕、河野氏は側近議員の応援のため千葉県のJR四街道駅前で「日本が共産主義に染まってしまうのかどうかが問われる選挙だ」と強い口調で訴えた。演説後に立ち去ろうとすると、「あ、ワクチンのおじさんだ」「エモい写真撮らせてください」などと、小学生ら100人ほどに取り囲まれ、身動きが取れなくなるほどだった。

 報道各社の世論調査で、次期首相候補として圧倒的な支持を得ながらも、総裁選では苦杯をなめた。総裁選中は、連日20人近くの記者が河野氏の密着取材をしていたが、現在は報道陣も次々と離れ、閣僚に配置される警備員(SP)もいなくなった。岸田氏が、河野氏の発信力に期待してあてがった党広報本部長の役職も「格落ち」「冷や飯」とささやかれた。

 そんな永田町の評価とは対照的に、どこへいっても抜群の知名度は健在のようだ。そのためか、河野氏も周囲に落ち込んだ様子は見せていないという。総裁選投開票日の3日後には大阪府枚方市内に応援に駆け付け、1000人以上の聴衆を前に「いろいろあって、(首相に就任しなかったため応援に)伺えることになった」と自虐ネタで会場を沸かせた。千葉県、大阪府、兵庫県、北海道と東奔西走している。

 応援の依頼は、自身に近い議員からだけではない。総裁選で他の候補を支持した議員からも殺到している。…(以下有料版で、残り677文)

毎日新聞 2021/10/13 14:00(最終更新 10/13 14:22)
https://mainichi.jp/articles/20211013/k00/00m/010/065000c