■Twitterには「行きすぎたポリコレ」という批判が…
兵庫県明石市で公園のトイレについて、外壁の色を5つのデザインの中から市民による投票で決めたところ、1位になったのは208票を獲得した「男性側の壁が淡い青色、女性側の壁が淡い赤色」という案であった。

明石市がこれを公表したところ「『男性が青、女性が赤』という決めつけは性的少数者への配慮が足らない」というような意見が2件寄せられた。

明石市はこれらの意見を尊重し、全体を茶系統で統一し、性別による壁の色分けのないデザインに変更したという。僕がこのニュースを最初に知ったのは、「たった2件の意見で、市民の多数決が無視された!」という、いささかヒステリックな内容のツイートに貼られたリンクからだった。

Twitterを検索してみると「(変更は)バカバカしい」「行きすぎたポリコレ」「少数への配慮で、多人数が使いづらく」などという、批判的な意見が数多く述べられていた。

たしかに2件の意見だけでデザインが変わるのはおかしい。そこで記事をしっかり読んでみたところ、Twitterでの反応はかなり度の強い色眼鏡がかけられていることが分かってきた。

■日本のトイレでは「男性用は青、女性用は赤」が当たり前だが…
青と赤に色分けされた案が市民投票で1位であったことは間違いないのだが、一方で、変更後の全体を茶系統で統一する案は2位で、票数も200票を獲得しており、1位と2位の差はわずかに8票と僅差であった。どちらも十分に支持を得ているデザインであることから、1位の意見を取りやめ、2位の意見を採用したことは、決して市民の意見をまるっきり無視したものとは言えないだろう。

そして、Twitterで怒っていた人の多くが勘違いしていると思うのだが、このデザインについての市民投票は、あくまでも「壁の色」に関する投票であって、トイレの入り口に使われる男女のピクトグラムの形や色といった部分の投票ではなかった。

Twitterなどで一騒ぎあった後、NHKがこの問題を取り上げている。明石市の担当者は、決まったのは外壁のデザインだけであり、入り口部分には青赤で色分けしたマークをつけるなど、誤解がないような工夫を検討している、などと話していた。

僕は、今回の件で騒いでいる人たちは、基本的に「ポリコレ」や「性的少数者への配慮」を嫌う人たちなのだと考えている。

その嫌うための理由として今回の件をわざわざ持ち出し「色分けしないと緊急時に間違える」「間違えたら逮捕される」「弱視などの人を軽視している」「大多数に使いづらい」などと騒いでいる。

では、彼らの言い分を聞くとして、男性は青、女性は赤と区分すれば、大多数にとって使いやすいトイレになるのだろうか。

日本のトイレでは「男性用は青、女性用は赤」というデザインが基調になっていて、僕を含めた大多数の人は、それが当たり前だと思っている。

■性的少数者への配慮以前の問題
しかし世界を見ればこうした色分けは決して一般的ではなく、男女ともに同じ色であることが多いという。では何で区別するかと言えば、ピクトグラムの形やMENやWOMENといった言葉で区別している。

バリアフリーを意識する海外の公共施設では、男女とも同じ青色の背景に、男性は三角、女性は丸形の白いピクトグラムが使われていることが多いようだ。色覚に異常を持つ人にとって、青は見やすく、赤は見づらい色であることが多い。このため青地に白という色づかいが選ばれている。

今回の投票で1位になったデザイン案は、男性が淡い青色、女性が淡い赤色だったため、色覚に異常を持つ人からは似た色に見えてしまうのだという。

つまり、1位となった淡い青色と淡い赤色の組み合わせは、バリアフリーという観点からは望ましくないデザインだったと言えるのである。

さららにもう1つ。騒いでいる人たちは「色分けをしないと絶対に間違える!」と、さも色分けこそが男女の区別をするための絶対的な方法であり、色分けしなければ大多数の人にとって使いづらいトイレになると主張しているが、それは本当だろうか(以下リンク先で)。

性別による色分けをしない案。再協議で採用された
https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/3/710wm/img_e36e28a978deb794d9c9e7306b790622758458.jpg
当初、市民投票で選ばれた公衆トイレのデザイン案。男性用が青色、女性用が赤色だった
https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/710wm/img_fbca2299b084226ff61d185e398abcbf716435.jpg

PRESIDENT Online2021/10/22 15:00
https://president.jp/articles/-/51152

★1・2021/10/22(金) 16:36