「教科担任制」来年度から小学校高学年に本格導入 教員の働き方改革につながるか…教員配置など課題も

 1人の教員が特定教科を受け持ち複数の学級で教える「教科担任制」について、文部科学省は2022年度から、全国の公立小学校高学年(5、6年)で本格的に導入を進める。教員が学級担任としてほぼ全教科を教える「学級担任制」が原則の小学校では大幅な見直し。学びの質向上や教員の負担軽減による「働き方改革」に期待が集まる一方、教員配置などの課題を指摘する声もある。 (小松田健一)

◆学級の個性に応じた指導が可能
 「自分の考えと比べて似ているところ、違うところはどこか考えてみよう」。10月13日、東京都江戸川区立第4葛西小学校。青森、秋田両県にまたがる白神山地の自然保護のあり方を考える5年生の国語の研究授業を他の教員が見守り、熱心にメモを取っていた。
 授業をしたのは5年の別学級で担任をしている高田紘行教諭。同校は本年度から、区教育委員会指定のモデル校として3〜6年の一部教科で、教科担任制を試行している。5年は3学級あるが、授業中の児童の反応や理解度はそれぞれ異なるという。高田教諭は「学級の個性に応じた指導ができる」と話した。
 授業を受けた5年生男児(11)は「最初は緊張したけれど、もう慣れた。先生が難しいことでも分かりやすく説明してくれるからいい」と感想を話した。
◆教員の負担を軽減
 各教委や学校レベルでは、既に音楽や理科など実技、実験を伴う教科を中心に、高学年での教科担任制の取り組みが進行中。文科省は新年度からの本格導入で、外国語、算数、理科、体育の4教科で、優先的に教科担任制を進める。
 文科省は教科担任制の利点として、教員の持ちコマ数が減って負担が軽減し、授業準備がしやすくなって授業がより分かりやすくなるとする。子どもにとっては、中学校進学直後に学びがつまずく「中1ギャップ」の防止につながるメリットなどを挙げる。
 同校の永浜幹朗校長は「複数の教員の目で子どもを見られる意義は大きい。経験が浅い若手教員の不安も軽減できる」と強調する。
◆問われる教員の「教える力」
 一方で、1人の教員が複数学級で授業すると、時間割編成が複雑になる恐れがある。例えばある教科の教員が丸1日、校外行事などで授業できない場合、代役をどうするのか。時間割編成は中堅クラスの「教務主任」が行うのが一般的で、永浜校長は「各校とも教務主任の力量が求められる」と指摘する。
 保護者からは、教科で教員が変わることで「教える力」の差がより目立つようになるのではとの声も。小4の娘がいる渋谷区内に住む母親(44)は「娘の担任はとてもいい先生なので、別の先生になったとき、力量が気になる」と話す。
 人員に余裕を持たせることも不可欠で、文科省は22年度当初予算案の概算要求に2000人の教員増を盛り込み、4年間で計8800人の増員を目指す。
 教科担任制に詳しい釼持勉・明海大学客員教授(学校経営学)は「小規模校だと1人で複数学年を教える可能性があり、その場合はかえって今より負担が重くなる。学校規模に応じた配置が必要だ」と話した。

東京新聞 2021年11月18日 06時00分
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