新幹線、唯一の踏切 JR東海浜松工場

 「カンカンカン」という警報音に合わせるように、遮断機の向こうを新幹線の16両編成がゆっくりと通過していく。最高時速285キロを誇るのに、ジョギングほどの速度。3分ほどは待たされる。JR東海浜松工場(浜松市中区)への引き込み線にある「西伊場第1踏切」は、東海道新幹線で唯一の踏切だ。
 1912(大正元)年、蒸気機関車の点検や修繕から始まった工場は、64年から東海道新幹線の車両工場になった。今年9月27日には通算4万両の検査数を達成した。
 踏切を通過するのは年間約500回。決まった運行日はないが、新幹線を間近に見るチャンスは結構多い。
 東京駅から列車に乗ったまま浜松工場に入場できる恒例のイベント「新幹線なるほど発見デー」は、鉄道ファンの人気を集めたが、「コロナ禍でこの2年間は開催できていない」と坂上啓工場長(56)。2019年には最新の検査装置に入れ替える工事が完了した。「いつも温かく支えてくれる地元の人たちへの恩返しのため、感染が落ち着いた段階でイベントを再開したい」。工場にも、ファンにとっても、コロナ禍という遮断機が下りたまま長い踏切待ちが続いている。 写真・文 斉藤直純

中日新聞 2021年11月21日 05時00分 (11月21日 05時03分更新)
https://www.chunichi.co.jp/article/369487?rct=h_shizuoka
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