だが、吉村知事に突き刺さったブーメランはこれだけではない。吉村知事は岸田政権のクーポン事務費問題について、「政策の理念が見えず、クーポンにする必要がよく分からない」と言ったが、吉村知事も現金で支給すればいいものを「メッセージ付きQUOカード」という意味不明の政策を実行した前科がある。

吉村知事は昨年4月、「(コロナの)最前線で戦っている人を応援したい」と言い出し、ふるさと納税を活用して全国から集めた寄付で基金を創設、コロナ患者に対応する医療従事者やホテル従業員らに「応援金」を配布すると発表した。だが、同年5月からの支給で配られたのは、現金や電子マネーではなくQUOカードやQUOカードPay、そして謎のメッセージカード。そこには「大阪府知事 吉村洋文」の署名で、〈皆様への感謝の気持ちを形にできないかと、大阪府で寄付を募りました〉〈お送りするのはお金ではなく、感謝の気持ちです。ありがとう。感謝です〉などと書かれた吉村知事直筆のメッセージも印刷されていた。


金券よりも現金のほうがありがたいのは当たり前だが、そもそも人々の寄付で支援金を支給するというのに、まるで吉村知事のPRのようなメッセージカードまで付けるとは……。当然、この贈呈方法の決定には「なぜ現金ではないのか」という疑問の声があがったが、対して吉村知事は「(QUOカードのほうが)早く処理できる」と説明していた。

しかし、現金ではなくQUOカードになった理由は、それだけではなかった。毎日新聞の今年5月8日付記事によると、府内の30代女性会社員が情報公開請求で入手した資料には〈「迅速な給付」や「事務負担」と並んで「感謝メッセージ力」というキーワードが決定打として記されている〉というからだ。

この女性は「note」でこの資料を公開しているが、支援金の贈呈方法を比較・検討した際の資料には、「現金」は〈感謝メッセージ力は小さい〉とし、一方、「金券(QUO等)」は〈メッセージカード同封により、効果大〉と書かれていた。つまり、現金ではなくQUOカードにしたのは、「早く処理できる」だけではなく、吉村知事の成果をPRする例のメッセージカードを同封できるかどうかも決定打になっていたのである。


支給される側の使い勝手よりも「自分アピール」を優先する。そんな愚策を打った当事者が、よくもまあ5万円クーポン問題で「完全な愚策だ」などと言えたものだ。

だが、こうした「ブーメラン発言」は吉村知事にかぎったものではない。たとえば松井一郎・大阪市長も、日本共産党の志位和夫委員長の在任期間の長さを問題にしてきたが、維新は結党以来、代表選を一度もおこなっておらず、先日も松井氏の再選を決めたばかり。

いや、もっと言えば、松井市長や吉村知事、さらには維新の生みの親である橋下徹も「身を切る改革」を掲げ、“まずは自ら率先して国会議員の既得権益を改革する”ことを強調してきたが、「政党にとって最大の既得権益」「税金の無駄遣い」とも言われ、全国民1人あたり年250円、年間約300億円という文通費以上の税金が投じられている政党交付金については問題視せず。さらに、2020年の政治資金収支報告書によると、維新の収入総額約23億円のうち8割が政党交付金となっており、政党のなかでもっとも政党交付金=税金頼りであることが判明した。つまり、政党本体の存在理由自体にブーメランが刺さっているのだ。

だが、維新や吉村知事、松井市長らの強みは、こうして数々のブーメランが刺さっても図太く平然とし、自分たちのことは棚に上げて他党を攻撃することでメディアにネタを与え、大衆の歓心を買ってきたことだ。そして、この厚かましいにもほどがある恥知らず集団がいまや勢いを増し、実際には政権与党と対決する姿勢など微塵もないというのに反自民の受け皿になりつつある。反吐が出るとはこのことだろう。
https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_litera_12145/?p=3
https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_litera_12145/?p=4