人々を笑わせ、考えさせられるユニークな研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」。2021年は、「歩きスマホ」が歩行者同士にどう影響するのかを実験した京都工芸繊維大の村上久助教(34)ら日本の研究チームが、「動力学賞」を受賞した。
大学時代から動物の「群れ」に興味を持ち、鳥や魚、カニなどの動きを調べてきたという風変わりな発想がヒントとなり、世界的な栄誉に輝いた。

「受賞の反響はとても大きく、こうして研究分野が注目されるのは非常にうれしい」

 長髪に鮮やかなシャツ姿で、話し方も穏やかでくだけた雰囲気――。
一般的な大学教員のイメージとはだいぶ異なるが、研究の話題になると話は尽きない。


 歩きながらスマートフォンを操作する「歩きスマホ」。
端末に視線を取られて周囲への注意がおろそかになる危険性が指摘され、東京消防庁のまとめによると、16〜20年の5年間に、歩いたり自転車に乗ったりしながらのスマホ操作による事故で管内で196人が救急搬送された。

 今回受賞した実験では、27人ずつの集団が対面して10mの道をすれ違う状況を仮定。
通常は歩行者が列を作ってスムーズに進むが、片方の集団の3人が歩きスマホをしたところ、両方の集団の列が乱れ歩行速度も低下した。

 「スマホを持っている集団がうまく歩けないのは予想していたが、持っていない集団の列も乱れていたのは意外だった」

 分析すると、一部が歩きスマホをしているだけで、本人だけでなく周りの人の歩行も乱れ、ぶつかる直前に大きくかわすようになることが判明した。

「裏を返せば、普段私たちが歩いてすれ違うとき、互いの行動を予想しながら、一種の『あうんの呼吸』で歩いているということになる」と指摘する。

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2021年12月13日 07時00分
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