埼玉県と県の医師会は、オミクロン株が急拡大した第6波の前にあたる、2021年10月から2022年1月までの4か月間に、
県内7つの医療機関の「後遺症外来」を受診した422人の症状などを分析し、症例集をまとめました。

主な症状でみると、最も多かったのは、「嗅覚障害」の25.6%で、4人に1人が訴えていました。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/testimony/detail/still/testimony_55_02.jpg

新型コロナの発症時期でみると、第5波の2021年7月から9月が最も多くなりましたが、
発症からおよそ1年経過しても後遺症に悩む人が一定数いることがわかりました。


新型コロナの後遺症の患者の中には、半年以上、症状が改善せず、仕事を続けられなくなるケースもみられます。

埼玉県に住む60歳の男性は、2021年8月に感染し、39度近い発熱や、けん怠感、肺炎の症状が出て、自宅で療養を続けました。
味覚や嗅覚もなくなり、食事がほとんどとれず体重は10キロ以上、減ったということです。

建設現場の仕事に復帰したものの、体のだるさや不眠などの症状を訴え、
家族からは「ぼんやりしている」と言われ、2021年12月、仕事を続けられなくなったということです。

60歳の男性
「1時間ぐらい寝ると朝まで眠れません。仕事に行っても持続力がなく、やらなければいけないことがわかっていても、ぼんやりして手足が止まってしまい、
こうした状況では仕事に行けないと思いました」

男性は、後遺症外来で、頭がぼんやりして記憶力や集中力が低下する「ブレインフォグ」の症状だと説明されました。

薬の処方や療養指導を受けていますが、発症から7か月がたった今も症状は大きく改善せず、けん怠感や頭がぼんやりした状態が続いていると訴えています。

60歳の男性
「まさかこんなに長引くと思っていなかったし、1年以上、受診している人もいると聞きました。この先どうなるのか不安です」

男性の主治医 公平病院 公平誠病院長
「後遺症の症状の中でもけん怠感やブレインフォグは軽快しづらく、半年以上、症状が続く方もいます。継続的なサポートが重要です」

新型コロナの後遺症の患者の中には、粘り強く治療を続けることで症状が改善するケースもあります。

埼玉県の高校に通う16歳の女子生徒は、高校入学直後の2021年5月に感染が判明し、39度近い発熱や、激しい頭痛、息苦しさなどの症状が出ました。
ホテルでの療養を終えて登校を再開しましたが、数日でめまいや頭痛、強いけん怠感、それに味覚や嗅覚に異常がみられたということです。

特に、めまいはひどく、秋には学校に通えなくなり、1日のほとんどを自宅のベッドで過ごすようになったということです。
4か所の医療機関で診察を受けましたが、なかなか症状は改善しなかったということです。

女子生徒
「治らなかったらどうしようという不安が大きかったです。病院を転々として悲しかったです」

女子生徒の母親
「最初は娘のつらさがわからずに学校に行かせようとしたんですが、さらに具合が悪くなってしまいました。
娘はめまいが心が折れるほどきつくて、絶望的な気持ちになっていました」


今回、分析の対象となったのは、オミクロン株の拡大より前に感染した患者がほとんどで、埼玉県と県の医師会は、
今後、オミクロン株による後遺症についても分析していくことにしています。

埼玉県医師会 丸木雄一常任理事
「今後、おそらく第5波の数倍の後遺症の患者が出てくるのではないかと思います。そうした患者に対応しながら、新しい知見が得られればこの症例集に新たに加えていきたい。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/testimony/detail/detail_55.html