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月100万円「目的外」使用を合法化へ 国会議員文通費で共産除く与野党が合意 専門家「横流しを正当化」と批判
2022年4月8日 06時00分
東京新聞
国会議員に月100万円支給される「文書通信交通滞在費」(文通費)を巡り、与野党は7日の協議会で、日割り支給への変更に合わせ、名称と目的を変更する法改正案をまとめた。
4月中の法改正を目指す。
文通費は議員の国会での活動を支えるための経費だが、今回の改正は議員の選挙活動などにも使われている実態を合法化する内容。
識者からは、選挙などの政治活動に文通費を充てるのは目的外の支出で、横流しを正当化するものだとの批判が出ている。(井上峻輔)
文通費は現行の歳費法で「公の書類を発送し、公の性質を有する通信をなす等のため」と目的が定められている。
しかし、多くの政党は使途を公表しておらず、各議員が仮に私的に使っていても分からないのが現状。
関係者や一部政党の公開資料によると、議員が関連する政治団体への寄付や私設秘書の人件費に充てるなど、事実上、選挙活動に使っている例は多い。
改正案では、日割り支給と合わせ、名称を「調査研究広報滞在費」に変更。目的も「国政に関する調査研究や広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」に改める。
政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は、文通費を選挙など政治活動に支出することは「目的外」だと指摘。
今回の改正案について「政治活動への横流しを正当化しようとしている。名称に『広報』、目的に『国民との交流』などの文言を入れれば、居酒屋での飲食さえ可能になる。日割り支給の議論に便乗した、ご都合主義の見直しだ」と批判した。
協議会では自民、立憲民主、日本維新の会、公明、国民民主の各党が賛成。
共産党は名称と目的の変更に反対した。
協議会事務局は「過去の国会での議論など文通費の歴史的経緯を踏まえた」と説明するが、条文に実態を合わせるのではなく、実態に条文を合わせようとする思惑が透ける。
文通費見直しの議論は、昨年10月の衆院選で当選した新人議員が在職1日でも満額支給されたことを契機に始まった。
与野党は2月に「日割り支給」「使途基準の明確化と公開」「未使用分の返還」について6月15日までの今国会中に結論を得るとしていた。
ただ、領収書を公開することに消極的な意見も根強く、使途公開や返還の具体的な検討は今も始まっていない。
今月の法改正は、24日投開票の参院石川選挙区補欠選挙で当選した議員への支給に間に合わせる狙いがある。

文書通信交通滞在費 国会法と歳費法に基づき、国会議員に支給される経費。1993年に現行の制度となり、月額は100万円。非課税で領収書添付や使途の報告・公開、未使用分の返還の義務はない。「第二の給与」とも呼ばれる。

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