(中略)

今、日本の学校教育は、明治以来といわれる大きな改革が行われようとしています。そのキーワードが「探究」です。「探究」とは、辞書で引くと「物事の意義・本質などをさぐって見きわめようとすること」(三省堂『大辞林』)とありますが、学校で行われる探究型学習は、「正解を暗記する勉強法ではなく、自ら問いを立てて、課題を解決するために情報収集をし、みんなで意見を出し合い、解決へと導く能力を育んでいく学習」のことを言います。

(中略)

今年度から、高校ではその名も「古典探究」「理数探究」「地理探究」など「探究」の付いた科目が新設されました。また、「総合的な学習の時間」は「総合的な探究の時間」に改められます。

では、いったいなぜこれほどに「探究」が重要視されているのでしょうか。

それは、社会がものすごいスピードで変化し、複雑化しているからです。AI(人工知能)やVR(仮想現実)などデジタル技術の革新で、Society 5.0の波が到来しているといわれています。また、地球温暖化に伴う気候変動や異常気象による自然災害、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック、そしてウクライナへのロシアの侵攻に象徴される世界情勢の変化など、予測も解決も困難な事象が次々と起こっています。まさにVUCA※な時代です。

こうした激しい変化に対応していくためには、物事を自分事として捉え、自ら問いを立てて情報を集め、考え、行動するというサイクルを回していく必要があります。これはまさに、探究学習のサイクルと同じです。

つまり、変化が激しく予測困難な社会に対応し、自分らしい生き方を選択して幸せに生きていくためには、「探究」する力を子ども時代から身に付けていく必要があるということなのです。

世界の教育は?フィンランドの探究的な学び

では、世界の教育はどうなっているのでしょう。

OECD(経済協力開発機構)による「Education 2030」というものがあります。下図は「ラーニングコンパス」と言って、2030年に向けて必要な能力の再定義と学習フレームワークが描かれています。これには、生徒が、未知なる環境の中を自力で歩みを進め、進むべき方向を見つけ舵取りをするという意味を込めて、コンパス(羅針盤)と名付けられています。

ここで注目したいのが、学びの目的地が、ウェルビーイングであるということです。ウェルビーイングとは、「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあること」を意味しますが、自分自身そして社会のウェルビーイングを実現するために、自ら行動できる意志を持った人を育成することが、世界の教育の目標になっているのです。

(中略)

フィンランドの生徒たちは、学校で、インターネット検索、図書館、オンラインアプリやゲーム、ほかの人へのインタビュー、実践的なプロジェクト、学校以外の場所や自然のスポットへの訪問など、さまざまな方法を通して学んでいます。

例えば、環境問題やSDGsについて、森林を訪れたり、自然学校で学んだり。STEM教育を通じて独自の製品を作って販売しながらアントレプレナーシップについて学ぶなど、体験や教科横断型の授業も頻繁に行われています。これらはまさに、探究的な学びですね。

フィンランドでは、日本の学習指導要領に当たる教育目標が、3~4年に一度アップデートされますが、その理由は社会変化のスピードに合わせる必要があるから(日本ももう少しフレキシブルに変化に対応していったほうがいいのではないでしょうか)。

その結果、今のゴールは、PISAの学力を上げることではなく、「地球市民への道」だといいます。そして、多文化を背景に持つ仲間と一緒に、多言語や異文化について学びながら、心の知能指数(EQ)を上げることが、今日のフィンランド教育における大事な項目の1つになっているのです。

日本の教育現場で探究が広がりにくい理由

(中略)

教育現場で探究が広がりにくい理由をある公立中学校の先生は、「探究的な学びを教員が受けてきていないので、実感が湧かないし、学習指導要領が目指す方向性を市教育委員会や校長先生が本質を理解していないので、具現化できない」と言います。

一方で、探究的学びができている学校の子どもたちは、主体性があり、自律している。主体性を持って学べているから、全国学力調査の結果も全国平均を超えているのだとか。

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