2022年8月4日 12:04

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2日、ツツイカの一種であるアオリイカの商業化に向けた養殖技術を世界で初めて開発したと発表した。イカの養殖は難しく、低コストで大量に飼育できるシステムはこれまで確立されていなかった。
今回、イカのふ化から繁殖までを水槽内で何世代にもわたって続ける「累代飼育」に成功。安価で効率的に養殖を行うことが可能になり、技術の商業化が期待される。

 OISTのジョナサン・ミラー教授らの物理生物学ユニットチームが開発した。2017年に研究を始め、5年間で5万匹以上が生まれた。今年4月までに、ふ化から繁殖までを10世代にわたって繰り返すことに成功。アオリイカの累代飼育が10世代まで続くのは世界初となる。

 研究ではイカの成長に合わせて16個の水槽を用意し、水温や水質、餌やりを調節。水槽のサイズを小型化し、コストを抑えた。

 水の循環は海水を海から水槽内に流し、また海に戻す「かけ流し」の技術を採用。ふ化してから90日以内の生存率は既存の研究では数%にとどまっていたが、90%超まで上昇した。

 世代や生息環境を管理、調査できるデジタルシステムも独自で開発し、効率的に飼育ができる仕組みをつくり上げた。

 日本の海に生息するイカ類は1980年代から減少し、現在では全盛期の1割程度にまで落ち込んでいるという。日本でも輸入加工品に頼っている現状がある。
ミラー教授は「研究成果は、ツツイカを持続的に養殖できる画期的な一歩となった」とコメントした。OIST客員研究員の中島隆太博士は「ふ化率も向上した。沖縄の食文化や海のために技術を還元したい」と話した。

 今後は県内の漁協関係者や行政と協力し、養殖技術の商業化に取り組む予定だという。

(北部報道部・玉城日向子)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1002388