27日に営まれる安倍晋三元首相の国葬を外務省が在日ミャンマー大使館に通知したことについて「市民を弾圧する国軍側を来賓として招くことは国葬開催の理念に反する」と東京都の在日ミャンマー人が抗議している。くしくも27日は、2007年に反政府デモを取材中に射殺された映像ジャーナリスト、長井健司さん(当時50歳)の15回目の命日。東京都在住のミャンマー人男性に、長井さんへの思い、国葬通知が持つ問題点について聞いた。

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 今年の長井さんの命日には安倍晋三元首相の国葬が開かれる。外務省は在日ミャンマー大使館に国葬について通知した。民主派側ではなく、ミャンマー国軍側のみを事実上招いた形だ。ウインチョーさんは「国軍を政府代表として扱って国葬に招いてはならない」と強調する。

 岸田文雄首相は国葬を実施する理由の一つに「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」ことを挙げた。ウィンチョーさんは「ビルマの多くの市民が民主主義を取り戻そうと、国軍の暴力に屈せず戦っている。国軍側を招くことは国葬の『民主主義を守る』理念に矛盾する」と切実に訴える。

 ミャンマーで民主化を取り戻そうと戦う市民の多くは「若者たち」であり、日本にも留学生や技能実習生の若者がいると指摘する。ウィンチョーさんは母国を「ビルマ」と呼ぶことにこだわる。88年の民主化運動を押さえ込んだ軍事政権が翌89年に多数派のビルマ族由来の国名から全民族を意味する「ミャンマー」へと変えたが、ウィンチョーさんは「市民の合意を得ずに国軍が一方的に変えた国名は認められない」と憤る。「(軍事政権が89年に改名した)ミャンマーではなくビルマの次世代を担う彼らが、日本の対応を真剣に見極めようとしている。それを忘れないでほしい」

旧宗主・英国は女王国葬に招かず

 ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、21年2月のクーデター以降、22年9月16日までに国軍の弾圧で2281人が殺され、1万2412人が拘束されている。

 国葬について、外務省は7月にミャンマーを含む日本と国交がある国などに在日大使館などを通じて通知。ミャンマーから予定される来賓者について、同省担当者は取材に「現段階で個別には答えない。しかるべきタイミングで公表する」としている。

 19日のエリザベス英女王の国葬について、BBCなどによると、国軍によるクーデターが起きたミャンマーは招待されていない。【鶴見泰寿】

https://mainichi.jp/articles/20220916/k00/00m/040/171000c