兵庫県西宮市はフリーマーケットアプリ「メルカリ」で、回収した粗大ごみの中からまだ使用できる家具やレジャー用品を販売する取り組みを始めた。市には粗大ごみの回収依頼が年間12万件以上あり、率先してリユース(再使用)に取り組むことで市民を啓発し、粗大ごみの減量を狙う。

 個人間の売買ができるメルカリに事業者なども出品できるサービス「メルカリShops(ショップス)」を使って販売する。売買が成立すると、価格の1割が手数料として差し引かれる。自治体として粗大ごみを出品するのは、5月に始めた愛知県蒲郡市、新潟県加茂市・田上町消防衛生保育組合に続いて全国で3例目という。


 市は10月24日から販売を始め、ソファやラック、スキー用品、クリスマスツリーなど500~2000円の12点を出品した。購入者は市環境事業部で現品を確認後に引き取る必要があるが、すでにキャビネットや鏡などの購入者が決まり、出だしは好調だ。だが、販売利益は目的の一つに過ぎず、市民にメルカリなどの利用を促し「リユース文化」を根付かせることが真の狙いだという。

 背景には、市が回収する粗大ごみの増加がある。持ち込みなども含めた排出量は年5200トン台で推移しているが、回収件数は2019年度の9万6890件から20年度に11万3126件、21年度に12万7383件と右肩上がりで増えている。新型コロナウイルス禍で起きた断捨離ブームや、20年8月から無料通信アプリ「LINE(ライン)」で手軽に申し込めるようになったことが影響しているとみられる。申し込みが多い時は回収まで1カ月かかり、作業員が土曜日も出勤して対応している。


 経済産業省が公表した16年度の電子商取引に関する市場調査によると、家庭に眠る過去1年間に不用となった製品の推定価値は総額約7・6兆円に上る。市は以前から状態の良いものを展示し無償譲渡しているが、回収には多大な人件費などが必要なため、回収前の段階でリユースを促す必要がある。

 市はメルカリの運営会社などと連携協定を結んだほか、不用品のやり取りが0円からできる地域情報サイト「ジモティー」や、複数のリサイクルショップが買い取り価格を一括査定してくれるオンラインサービス「おいくら」の運営会社とも協定を締結。市政ニュースなどでこれらのサービスを紹介する他、今後、公民館などでメルカリの使い方教室を開催したり、ラインでの粗大ごみ回収申し込みの際にサービスの利用を呼びかけたりすることも検討している。【稲田佳代】

毎日新聞 2022/11/6 10:00(最終更新 11/6 10:18) 1042文字
https://mainichi.jp/articles/20221102/k00/00m/040/132000c