境内で赤く色づいたイロハモミジの枝を無断で伐採されたとして、京都の古刹(こさつ)・建仁寺(京都市東山区)が21日、京都府警東山署に被害届を提出した。伐採したのは寺近くの祇園に店を構え、レストランなどの格付け本「ミシュランガイド京都・大阪2023」で二つ星に選ばれた日本料理店の関係者だった。モミジは料理の飾りとして使われることが多く、同寺は「似たような被害がこれ以上広がらないように」と厳しい対応をしたという。

 建仁寺は臨済宗建仁寺派の大本山。鎌倉時代初期、二代将軍の源頼家が寺域を寄進し、栄西を開山として建立された歴史を持つ。所蔵する俵屋宗達の「風神雷神図屏風(びょうぶ)」は国宝に指定されている。境内は周辺の生活道路として利用されており、深夜でも通行できる。


 寺によると、18日の午後10時半ごろ、境内の北門付近の駐車場を利用していた人が白いゴミ袋を持った男性2人組を見つけ、不審に思い声を掛けた。袋の中には20~30センチのモミジの枝3、4本(3000円相当)が入っており、警察と寺に連絡したという。2人組は料理店の従業員で、寺が防犯カメラの映像を確認したところ、モミジの木近くにあるフェンスによじ登って枝を切る様子が映っていた。

 同寺ではその数日前の日中にも、境内でモミジを切ろうとする男性を僧侶が見つけ注意していた。その際にも同じ料理店を名乗ったことから、深夜に改めて伐採に来た悪質なケースと判断して被害届を出すことを決めたという。

 料理店の男性店主は取材に、従業員の判断だったと認め「日ごろから料理の飾りに使えそうなモミジがあれば集めるよう言い、実際に店でも使っていたが、他人の敷地に入ったり、人に不快感を与えたりすることがないようにという指導が行き届いていなかった。自分の責任であり、お寺には深く謝罪したい」と話した。日中の伐採に関しては「従業員全員に確認したが、行っていないと言っている」と否定した。

 東山署は被害届を受理し、窃盗などの容疑で捜査している。建仁寺派の奥村紹仲(じょうちゅう)宗務総長(63)は「参拝される方のため日ごろから丹精込めて育てている樹木であり、勝手に切ることでどんな悪影響があるか分からない。何よりも祈りの場でこのようなことをされることは悲しい」と話し、「被害に気づきにくいこともあり、他のお寺でも同様のケースがあるのではないか。今回のことが抑止につながれば」と期待した。【花澤茂人】

毎日新聞 2022/11/29 16:50(最終更新 11/29 16:50) 1014文字
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