選手村の料理やボランティア向けの弁当の廃棄、日本の魅力発信の「空振り」――。東京五輪・パラリンピックについて、会計検査院は21日に提出した報告書で、経費が有効活用されなかったさまざまな事例を指摘した。

「食事、弁当、大量廃棄のフードロス……」
 東京五輪には205の国・地域から約1万1400人、パラリンピックには161の国・地域から約4400人の選手が集い、約9万人のボランティアが大会を支えた。選手らが期間中に宿泊した選手村のメインダイニングホールでは、約87万食が用意された。使われた食材は1207トンに上る。

 検査院によると、大会組織委員会は、事業者と飲食提供などの業務委託契約を結び、2021年度までに約71億円を支払った。一方、ホールでの食事は国際オリンピック委員会(IOC)の要請で、食習慣や宗教、体調管理などに配慮し、常時約700種類のメニューを提供することが求められた。検査院は、この結果、選手が手を付けなかった料理など計175トンが廃棄されていた、とした。

 また、組織委が期間中、ボランティアなどスタッフのために用意した弁当約160万食のうち約19%の約30万食が処分されたという。特に開会式では、約1万食のうち約4千食が食べられなかった。東京大会を巡っては、史上初めて1年延期されたほか、開会式の演出統括や楽曲担当の辞任など混乱も続いた。組織委の検査院への説明では、弁当の発注は提供3日前に行うが、大会の開催環境が流動的で、発注量の見直しが不十分だったという。

 大会ボランティアを務めた30代の会社員男性は「食材が余っていたのは事実だと思う。でも運営上、致し方ない面もあったんじゃないか」と振り返る。大会期間中、選手村や都内の競技会場で運営を担った。

 弁当の廃棄などは国会でも取り上げられ、批判を浴びた。「それでも結局余るので『お弁当を二つ持って行っていいですよ』と言われていた。批判も強かったから、現場では廃棄を減らす努力はしていたと思う」

 選手村の食堂に課題もあった。24時間営業で自室への持ち帰りはできなかったという。選手が寝泊まりする居住棟のロビーには、補食できるようにバナナやヨーグルトなどもあった。

 選手村については「食事を切らしてはいけない上に24時間いつでも、という環境もあって、食材の余りが多かったのでは。選手村で足りないものが多ければ、それはそれで批判されると思うし……。選手に十分に提供するためのバッファー(余裕分)と捉えるか、無駄と捉えるか、難しい面もあったと思う」と話した。

■「日本食材、世界に魅力発信…(以下有料版で、残り872文字)

朝日新聞 2022/12/21 17:00
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQDP45LLQDMUTIL03S.html?iref=sptop_7_03