「ランドセルはかなり高価なものが出てきている。保護者の学用品などの購入負担を軽減するため、学校ではランドセルでなければならないというランドセル主義はそろそろ見直す時期です」

 昨年の10月末、千葉県の熊谷俊人知事はツイッターや会見で、日本の伝統文化といえるランドセル主義について、教育現場にこう疑問を投げかけた。

 ランドセル工業会の調査によると、2022年4月に小学校に入学する子供のランドセルの平均価格は5万6425円で、4万5000円から6万5000円が全体の39.8%を占めている。少子化の影響や素材の値上げで価格は毎年上昇し、20年(5万3643円)に比べ2782円も上昇しているのである。

 小生の勉強不足かもしれないが、ランドセルを購入する活動のことを“ラン活”というそう。そして、ラン活には購入までの“ラン活スケジュール”があるというのだ。先のランドセル工業会によると、ランドセルの購入を検討する時期は入学前年の4月が最も多く、約70%の家庭が7月までに検討を開始しているという。しかもラン活スケジュールは、少子化などの影響から年々早期化の傾向があるという。

■人気ブランドは早々完売

 また、ランドセルの購入資金は半数以上が祖父母に出してもらっているそうだ。2歳の孫がいる小生もランドセル価格が気になりネットを開いて驚いた。まず価格は3万円台から高いものになると10万円から20万円を超える超高級品までかなりの差があることがわかった。 

 価格の差は使われている素材が人工皮革、牛皮、コードバン(馬の臀部の皮革)により違ってくる。デザイン、機能もさまざまで子供の負担を減らすなどの搭載機能が多いほど高く、コードバンを使った有名ブランドとのコラボや、職人の手作りランドセルになると超高級品になる。23年4月入学の児童向け人気ブランドはすでに完売状態で、人気モデルの購入は極めて難しいという。

 果たして祖父母の懐具合は大丈夫かと心配になるのだが、先の熊谷知事はランドセル主義についてこうした考えを述べている。

「学校現場、教育現場においてランドセルにしなければならない規定はない。『ランドセルやリュック等』といった形でランドセルに限らないということを市長当時に教育現場に文書で出してもらっている。保護者負担を軽減するため、教育行政として今以上に考えていかなければならない分野だと思っている」

おそらく小学校の入学、通学はランドセルが当たり前だと思っている人がほとんどだろう。だがそんな法令はどこにも存在しない。通学はランドセルでもリュックでも自由なのだ。

 東レ経営研究所の永井知美チーフアナリストがこう指摘する。

「厚労省が発表した21年国民生活基礎調査で(22年9月公表)、子育て世代の60%が『余裕のない生活』と感じています。しかも少子・高齢化、物価高の中で小学校入学時のランドセルに6万円もかけることに驚きます。入学時の学用品などの購入で、教育、学校現場は保護者の負担軽減を本気で考える時です」

 ランドセル主義に疑問を呈するのは、全国の首長で熊谷知事しか聞こえてこないのだが。

日刊ゲンダイ2023/01/20 06:00 
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