上記の例(1)の場合は,ア),イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できます。(2)の例も同様ですが,ア)の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようです。(3)の例は,条件を満たしていると判断すれば適切ですが,(2)と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるでしょう。(4)の例は,ア)とイ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断されます。(5)の例も,同様です。ただし,(4)については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得ます。(5)については,「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなります。

なお,ア),イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げています。上記の(2)~(5)についても,このような用法の具体例としてとらえることもできます。その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられます。