ソロキャンプをグループで…謎の「ソログルキャン」の現場をのぞいてみた

大手小町 6/9(金) 7:50

距離感絶妙…双方のいいとこ取り
食事をしたり、ごろごろしたりと思い思いの時間を過ごす「ソログルキャン」の参加者ら(神奈川県愛川町で)
ソロキャンプが人気を集めたが、最近はそれをグループで行う「ソログルキャン」を楽しむ人がいるらしい。一見矛盾するがどう過ごしているのか。現場をのぞいた。

4月下旬の土曜昼、神奈川県愛川町の中津川河川敷を訪れた。家族連れや友人同士ら多くのキャンパーに交じって、距離を取りながら1人用テントが並ぶ一角が気になった。せっせとテントを張る人、設営を終えてのんびりする人――。知り合いのようだが、声をかけるわけでも手伝うわけでもない。

彼らは、ソロキャンプの普及を目指す「日本単独野営協会」のメンバーだ。会の代表で横浜市の会社員、小山仁さん(46)は、椅子でくつろぎながら、「助けを求められれば手伝うけど、基本的には干渉しない。そんな距離感」と説明した。

その後も、たき火で食事を作ったり、テントで眠ったり。それぞれが自由に過ごす。かと思えば、ある人が新しく買ったテントをみんなで見学する場面もあった。

小山さんは、「初めからグループで役割を決めると、自分の好きにできないことがある。1人だとキャンプ道具の話などを気が向いた時にできない。それぞれの短所を補う要素がソログルキャンにはある」と話す。

アウトドアスタイル雑誌「ゴーアウト」のプロデューサー竹下充さん(44)は、「自分もキャンプは基本的にソログルキャン。仲がよくても同じ所で寝るのは気を使う。でも完全に1人ではあまり楽しいと思えない」と話す。初心者がソロキャンプを始める際、設営や火おこし、食事作りなどに一通り1人で挑戦したいものの、分からない時は周りの人に教えてもらえるという安心感がある。

博報堂生活総合研究所上席研究員の伊藤耕太さんによると、ソログルキャンという言葉がSNSに登場したのは2021年頃から。コロナ禍で人と人との間に距離を取ることが求められ、1人で様々な活動をすることへのハードルが下がり、ソロキャンプが人気を集めた。そのまま1人でいることを楽しむ人たちが集まり、ソログルキャンが広がっているとみられる。

同研究所が首都圏と阪神圏で実施している調査「生活定点」で、「人づきあいは面倒くさい」と考える人の割合は1998年の約23%から、2022年には約34%に増えた。年代別では30代が全体より約5ポイント高かった。職場や地域で人間関係が増え、反動で「つきあいは面倒だ」と思うようだ。

伊藤さんは「血縁や地縁といった人間関係は弱くなる一方、SNSの登場で必要な時だけつながる関係に慣れてきた。深くつきあうことで生じる面倒くささに敏感になっており、ソログルキャンにも反映されている。こうした関係は広がっていくのではないか」としている。

キャンプ場利用者「初心者」「1人」が増加
ある人が新しく買ったテントに集まる時もある
「日本オートキャンプ協会が協会加盟キャンプ場の利用者に調査したところ、キャンプを始めて1年以内の初心者の割合は2018年に約17%だったが、21年は約24%に増えた。「ソロ」の割合はこの間、5%から約13%に増加した。

初心者やソロの人に対し、協会事務局長の堺広明さんは「キャンプは非日常の体験なので、慣れるまで注意が必要なこともある」と話す。冷え込む夜もあることから、防寒具を準備する。まき割りやたき火でけがをしないように事前に練習しておくとよい。

ルールを定めているキャンプ場も多い。たき火ができる場所や就寝時間などを確認する。テントの設営に時間がかかりそうな人は余裕を持って行動したい。

1人の場合は、けがや事故に備え、家族らに行き先を伝えておくことが重要だ。

              ◇  ◇  ◇

仲がいいから、とずっと一緒にいるのは疲れる。かといって、完全に1人は嫌だ。ソロとグループは矛盾した言葉だが、それが一緒になるほど、結局、人は誰かとつながることを求めているのだと思う。(読売新聞生活部 加藤亮)

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