https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171126-00000004-mai-soci
モヤシがあまりに安い−−。原料費が高騰する一方で小売価格は低下し、
製造業者の団体が3月に文書で窮状を訴えた。なじみ深い食材ということもあって
異例の訴えがインターネット上で注目され、値上げ支持の声も上がった。
この騒動、その後どうなった?
室温25度前後の真っ暗な部屋に巨大タンクが並ぶ。旭物産(水戸市)のモヤシ工場。
タンクをのぞくと白く透き通ったモヤシが密生する。原料の緑豆に定期的に水をやり、
1週間ほどで育つ。季節や天気と無縁。価格は安定し消費者にはありがたいが、
専門知識を持つ社員が1日に2度、目視で芽の伸び具合を点検し、水の量や温度を
微調整するなど栽培に手間がかかる。原料の緑豆は大半が中国産で価格は上昇基調。
2015年の価格は10年前の3倍だった。
モヤシの価格で窮状を訴えたのは「工業組合もやし生産者協会」(東京都)だ。
「09年に全国で230社あった業者が100社以上廃業した」と危機を訴え、ネット上で
「業界が理想とする1袋40円でも安い」「モヤシ屋さんがなくなる」などの投稿が相次いだ。
関東地方が地盤のスーパー「ヤオコー」は9月に1袋200グラムの価格を税抜き19円から
25円に値上げした。「業者の要請で転嫁せざるを得ない」(広報担当者)。値上げの動きは
広がり、協会の林正二理事長は「業界の要請だけでは難しかった。ネットで消費者の
理解が進み、小売り側で値上げ環境が整ったのでは」と安堵(あんど)する。
◇
だが状況は楽観を許さない。長野県松本市のスーパーは今も19円で販売する。
競合店が値下げしたこともあり、担当者は「この店は安い、という店全体のイメージに
関わるので上げたくても上げられない」と打ち明ける。
総務省の家計調査でも平均価格は協会が窮状を訴えた3月に100グラム15円70銭だったが、
9月は15円65銭と下落。同時期、愛知県のスーパーがモヤシなどを1円で売り、不当廉売で
公正取引委員会に警告を受けた。
東京都練馬区などが地盤のスーパー「アキダイ」は以前からの値段を維持するが
仕入れ価格引き上げは受け入れた。価格据え置きの理由はモヤシの商品特性にある。
秋葉弘道社長は「販売点数が多く、値上げで売れ行きが鈍って鮮度が落ちれば
『他の野菜も新鮮ではない』と思われ、客離れが起きかねない」と説明。モヤシは
「いわば店の鮮度のバロメーターだ」と言う。
食品価格に詳しい農畜産物流通コンサルタントの山本謙治さんは「生鮮食品は利益より
客寄せの性格が強く、スーパーは仕入れ値を下げろと業者に圧力をかけがちだ。
卵も特売品だったが業界団体の努力で改善している。モヤシはまだスーパー側の圧力が大きい」
と分析。「日本の公取には安値販売を企業努力と見る意識があるが、英国には加工食品の
小売価格が適正かどうかを監視する政府機関があり、参考にすべきだ」と話す。
モヤシがあまりに安い−−。原料費が高騰する一方で小売価格は低下し、
製造業者の団体が3月に文書で窮状を訴えた。なじみ深い食材ということもあって
異例の訴えがインターネット上で注目され、値上げ支持の声も上がった。
この騒動、その後どうなった?
室温25度前後の真っ暗な部屋に巨大タンクが並ぶ。旭物産(水戸市)のモヤシ工場。
タンクをのぞくと白く透き通ったモヤシが密生する。原料の緑豆に定期的に水をやり、
1週間ほどで育つ。季節や天気と無縁。価格は安定し消費者にはありがたいが、
専門知識を持つ社員が1日に2度、目視で芽の伸び具合を点検し、水の量や温度を
微調整するなど栽培に手間がかかる。原料の緑豆は大半が中国産で価格は上昇基調。
2015年の価格は10年前の3倍だった。
モヤシの価格で窮状を訴えたのは「工業組合もやし生産者協会」(東京都)だ。
「09年に全国で230社あった業者が100社以上廃業した」と危機を訴え、ネット上で
「業界が理想とする1袋40円でも安い」「モヤシ屋さんがなくなる」などの投稿が相次いだ。
関東地方が地盤のスーパー「ヤオコー」は9月に1袋200グラムの価格を税抜き19円から
25円に値上げした。「業者の要請で転嫁せざるを得ない」(広報担当者)。値上げの動きは
広がり、協会の林正二理事長は「業界の要請だけでは難しかった。ネットで消費者の
理解が進み、小売り側で値上げ環境が整ったのでは」と安堵(あんど)する。
◇
だが状況は楽観を許さない。長野県松本市のスーパーは今も19円で販売する。
競合店が値下げしたこともあり、担当者は「この店は安い、という店全体のイメージに
関わるので上げたくても上げられない」と打ち明ける。
総務省の家計調査でも平均価格は協会が窮状を訴えた3月に100グラム15円70銭だったが、
9月は15円65銭と下落。同時期、愛知県のスーパーがモヤシなどを1円で売り、不当廉売で
公正取引委員会に警告を受けた。
東京都練馬区などが地盤のスーパー「アキダイ」は以前からの値段を維持するが
仕入れ価格引き上げは受け入れた。価格据え置きの理由はモヤシの商品特性にある。
秋葉弘道社長は「販売点数が多く、値上げで売れ行きが鈍って鮮度が落ちれば
『他の野菜も新鮮ではない』と思われ、客離れが起きかねない」と説明。モヤシは
「いわば店の鮮度のバロメーターだ」と言う。
食品価格に詳しい農畜産物流通コンサルタントの山本謙治さんは「生鮮食品は利益より
客寄せの性格が強く、スーパーは仕入れ値を下げろと業者に圧力をかけがちだ。
卵も特売品だったが業界団体の努力で改善している。モヤシはまだスーパー側の圧力が大きい」
と分析。「日本の公取には安値販売を企業努力と見る意識があるが、英国には加工食品の
小売価格が適正かどうかを監視する政府機関があり、参考にすべきだ」と話す。