秋から始まった幼保無償化で保育園希望者が増えるのでは、と言われていた2020年度に向けた保活。親の教育熱の高まりから、影響は思わぬところで出たようだ。幼保無償化がもたらした影響について取材したAERA 2019年12月23日号の記事を紹介する。
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2020年4月の保育園入園の締め切りがこの12月だった地域も多いだろう。働く親たちにとって保育園は生命線。“保活”の動向は、何よりも気になる。
その保活に大きな影響を与えるとみられていたのが、今年10月から導入された「幼児教育・保育の無償化」だ。「無償」ならば保育園に預けたいという潜在的ニーズが掘り起こされ、保活が激化するかもという予測もあったが、果たしてどうか。
これまで都心部などで待機児童が多かったのは、0、1歳といった低年齢児。少ない受け入れ枠に、育休明けで預けたい親たちの希望が殺到していた。この状況が、無償化でさらに激化することはないようだ。そもそも、無償化は0〜2歳児までは住民税非課税世帯のみが対象だからだ。影響があるとすれば、世帯収入に関係なく全世帯が無償となる3歳以降。みらい子育て全国ネットワークの天野妙代表は、結果を見ないとわからないとしたうえで、こう話す。
「保育園を利用したほうが時間ができて助成も受けられるので、3歳以上の保育ニーズが増す可能性は高い。所得に関係ない無償化は、高所得者優遇面が強く、格差が広がる懸念もある」
実際、格差につながる状況も生まれ始めている。
「息子の通う認可保育園のお友達が無償化をきっかけに、3人もインターナショナルスクールに移動しました」
と言うのは、東京都渋谷区に住む30代の女性だ。無償化の制度では、認可外の保育施設であっても保育料に対し一部補助が出る。このため、これまでなら高額で入園を躊躇していた、英語教育が充実した園へ転園の動きがみられるのだ。
「補助が出るならインターにということだと思います」
と、この女性は「お友達」の転園について語る。英語教育を売りにする園の中には、この秋から大々的に無償化のことを謳うところも出てきている。
首都圏を中心に展開している認可外保育施設のインターナショナル幼児園では、3歳以上のクラスは保育の必要性が認められれば、保護者が毎月3万7千円を補助金として受け取れる。通常の保育時間は午前9時から午後5時。延長保育は別料金だが、時短勤務ならば送迎も間に合う。園バスで送迎してもらうこともできる。
通常保育の月額保育料は13万〜15万円ほどと高額だが、補助金を使えばハードルが下がるというわけだ。特に都心部では、高額な保育料を払ってでもバイリンガル教育を受けさせたいという親の教育熱は高まる一方。
東京都港区では、3歳児で保育園から教育の充実した幼稚園への転園がもともと一定数あった。港区の保育の担当者は言う。
「3歳で保育園からインターナショナルスクールへの転園はこれまでも見られた。無償化でさらに増えるかは結果を見なければわからないが、可能性はある」
ほかにも無償化で浮いた保育料を、子どもの習い事に充てることも考えられる。無償化のこうした思わぬ余波について、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは警鐘を鳴らす。
「英語などの学習を保育施設に求める保護者もいますが、多くの専門家たちは、それが“質の高い保育”とは考えていません。この時期、子どもたちにとっては、英語よりも楽しく自由に遊べる環境が必要なんです」
12/21(土) 16:00配信
AERA.dot
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191219-00000028-sasahi-life&p=1
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2020年4月の保育園入園の締め切りがこの12月だった地域も多いだろう。働く親たちにとって保育園は生命線。“保活”の動向は、何よりも気になる。
その保活に大きな影響を与えるとみられていたのが、今年10月から導入された「幼児教育・保育の無償化」だ。「無償」ならば保育園に預けたいという潜在的ニーズが掘り起こされ、保活が激化するかもという予測もあったが、果たしてどうか。
これまで都心部などで待機児童が多かったのは、0、1歳といった低年齢児。少ない受け入れ枠に、育休明けで預けたい親たちの希望が殺到していた。この状況が、無償化でさらに激化することはないようだ。そもそも、無償化は0〜2歳児までは住民税非課税世帯のみが対象だからだ。影響があるとすれば、世帯収入に関係なく全世帯が無償となる3歳以降。みらい子育て全国ネットワークの天野妙代表は、結果を見ないとわからないとしたうえで、こう話す。
「保育園を利用したほうが時間ができて助成も受けられるので、3歳以上の保育ニーズが増す可能性は高い。所得に関係ない無償化は、高所得者優遇面が強く、格差が広がる懸念もある」
実際、格差につながる状況も生まれ始めている。
「息子の通う認可保育園のお友達が無償化をきっかけに、3人もインターナショナルスクールに移動しました」
と言うのは、東京都渋谷区に住む30代の女性だ。無償化の制度では、認可外の保育施設であっても保育料に対し一部補助が出る。このため、これまでなら高額で入園を躊躇していた、英語教育が充実した園へ転園の動きがみられるのだ。
「補助が出るならインターにということだと思います」
と、この女性は「お友達」の転園について語る。英語教育を売りにする園の中には、この秋から大々的に無償化のことを謳うところも出てきている。
首都圏を中心に展開している認可外保育施設のインターナショナル幼児園では、3歳以上のクラスは保育の必要性が認められれば、保護者が毎月3万7千円を補助金として受け取れる。通常の保育時間は午前9時から午後5時。延長保育は別料金だが、時短勤務ならば送迎も間に合う。園バスで送迎してもらうこともできる。
通常保育の月額保育料は13万〜15万円ほどと高額だが、補助金を使えばハードルが下がるというわけだ。特に都心部では、高額な保育料を払ってでもバイリンガル教育を受けさせたいという親の教育熱は高まる一方。
東京都港区では、3歳児で保育園から教育の充実した幼稚園への転園がもともと一定数あった。港区の保育の担当者は言う。
「3歳で保育園からインターナショナルスクールへの転園はこれまでも見られた。無償化でさらに増えるかは結果を見なければわからないが、可能性はある」
ほかにも無償化で浮いた保育料を、子どもの習い事に充てることも考えられる。無償化のこうした思わぬ余波について、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは警鐘を鳴らす。
「英語などの学習を保育施設に求める保護者もいますが、多くの専門家たちは、それが“質の高い保育”とは考えていません。この時期、子どもたちにとっては、英語よりも楽しく自由に遊べる環境が必要なんです」
12/21(土) 16:00配信
AERA.dot
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191219-00000028-sasahi-life&p=1