★ネオン街に現れる“セレクトショップ”。路上生活者が「売れ残り」を救う/夜のパン屋さん
誰も損をせず、みんなが楽しく満たされる仕組み。本来、全ての国民が健康で文化的な暮らしをするためには
それを支える社会的基盤が必要だ。しかし、社会の成熟度と仕組みづくりは常に課題を抱えており、コロナ禍で
そのひずみは顕在化している。仕事や住まいを失う生活困窮者が増え、支援団体への相談件数も増えているのが現状だ。
そんななか、東京・神楽坂では市民が持てる力を結集させて助け合いの輪をつなぐユニークなプロジェクト
「夜のパン屋さん」が立ち上がった。明日のパンに困る人もいる一方で、せっかくのパンが捨てられている
食品廃棄問題にも向き合う。グランドオープンを迎えた10月中旬、始まりの場所を訪ねた。
夜のパン屋さんは、ホームレスの人たちに自立支援を続けるビッグイシュージャパンの新規事業で、国連WFP
(世界食糧計画)による「ゼロハンガーチャレンジ」の一環でもある。
ビッグイシュージャパンは、ホームレスの人が収入を得る手段として、路上で1冊450円の雑誌「ビッグイシュー」
を販売し、1冊につき230円が販売員の収入となる仕組みで支援を行っている。直接的な現金収入とともに社会参加
のきっかけを提供し、ホームレス・貧困という難易度の高い社会問題にアプローチする仕組みだ。
NPO法人ビッグイシュー基金共同代表でもある料理家の枝元なほみさんは、ときに販売員さんたちと一緒に路上
販売を行い、その難しさを身をもって体験しているそうだ。
「人がたくさん行き来する場所で販売するんですが、あまりに素通りされることが続けば、まるで自分が透明人間
になったみたいな、みんなと隔たりがあるような、そんな感覚に陥るんですよね。売りたくてもうまく売れない
そのもどかしさに販売員さんたちはいつも向き合っています。その反面、声を掛けてくれる人、いつも買ってくださる人
そうした人への感謝は計り知れません」(枝元さん)
そのため、枝元さんはコロナ禍の前から雑誌が売れなかった日も販売員の支えになるような仕組みができないかと
考えていた。そして2020年のはじめ、「持続性のある使い方をしてほしい」と寄せられた寄付金をきっかけに
夜のパン屋さんの企画が始まった。
「北海道の十勝にある、満寿屋(ますや)さんというパン屋さんにヒントをもらい、パン屋さんの売れ残りを
再販させてもらうことを考えました。販売員さんたちは、日中路上でビッグイシューを販売した後、お約束している
パン屋さんを回って売れ残りをピックアップして回り、販売所に集めて、お仕事帰りの方々などにパンを販売する。
これならピックアップする約1時間と、販売する約2時間、合計で3時間ほどの時給を得ることができるので、もしも
路上販売がうまくいかない日だって、気持ちの拠り所にできると思ったんです」(枝元さん)
ビッグイシュージャパンの販売員は100名前後だが、立ち上げ段階であるため「夜のパン屋さん」には3名の固定販売員
さんがローテーションで担当する(10月時点)。また、販売員さんたち以外の枝元さんや支援者の方々はボランティア
であり、まずはきちんと事業として循環し続けられる仕組みを確立させることを重要視している。
「誤解されやすいのですが、夜のパン屋さんは売れ残りを安く売る活動ではないんです。こだわりの素材をつかって
人の手で丁寧に作られた食べ物はきちんと対価を得るべきだと思っているので、パン屋さんから購入させてもらって
います。そこに、販売員さんたちの支払いや場所代などの諸経費を含めて再販する仕組みです。これにより、パン屋
さんは売り切りを目的に営業時間を伸ばす必要がなくなるかもしれませんし、購入する人も、こだわりのパン屋さん
まで仕事帰りに行けないけど最寄駅の近くで買えるようになったりします。その間を販売員さんが取りもつことで、
食品廃棄も抑えられる。私ね、ぜったいに食べ物を捨てたくないんですよ」(枝元さん)
(一部抜粋)
https://ideasforgood.jp/2020/11/09/bigissue-bakery/
誰も損をせず、みんなが楽しく満たされる仕組み。本来、全ての国民が健康で文化的な暮らしをするためには
それを支える社会的基盤が必要だ。しかし、社会の成熟度と仕組みづくりは常に課題を抱えており、コロナ禍で
そのひずみは顕在化している。仕事や住まいを失う生活困窮者が増え、支援団体への相談件数も増えているのが現状だ。
そんななか、東京・神楽坂では市民が持てる力を結集させて助け合いの輪をつなぐユニークなプロジェクト
「夜のパン屋さん」が立ち上がった。明日のパンに困る人もいる一方で、せっかくのパンが捨てられている
食品廃棄問題にも向き合う。グランドオープンを迎えた10月中旬、始まりの場所を訪ねた。
夜のパン屋さんは、ホームレスの人たちに自立支援を続けるビッグイシュージャパンの新規事業で、国連WFP
(世界食糧計画)による「ゼロハンガーチャレンジ」の一環でもある。
ビッグイシュージャパンは、ホームレスの人が収入を得る手段として、路上で1冊450円の雑誌「ビッグイシュー」
を販売し、1冊につき230円が販売員の収入となる仕組みで支援を行っている。直接的な現金収入とともに社会参加
のきっかけを提供し、ホームレス・貧困という難易度の高い社会問題にアプローチする仕組みだ。
NPO法人ビッグイシュー基金共同代表でもある料理家の枝元なほみさんは、ときに販売員さんたちと一緒に路上
販売を行い、その難しさを身をもって体験しているそうだ。
「人がたくさん行き来する場所で販売するんですが、あまりに素通りされることが続けば、まるで自分が透明人間
になったみたいな、みんなと隔たりがあるような、そんな感覚に陥るんですよね。売りたくてもうまく売れない
そのもどかしさに販売員さんたちはいつも向き合っています。その反面、声を掛けてくれる人、いつも買ってくださる人
そうした人への感謝は計り知れません」(枝元さん)
そのため、枝元さんはコロナ禍の前から雑誌が売れなかった日も販売員の支えになるような仕組みができないかと
考えていた。そして2020年のはじめ、「持続性のある使い方をしてほしい」と寄せられた寄付金をきっかけに
夜のパン屋さんの企画が始まった。
「北海道の十勝にある、満寿屋(ますや)さんというパン屋さんにヒントをもらい、パン屋さんの売れ残りを
再販させてもらうことを考えました。販売員さんたちは、日中路上でビッグイシューを販売した後、お約束している
パン屋さんを回って売れ残りをピックアップして回り、販売所に集めて、お仕事帰りの方々などにパンを販売する。
これならピックアップする約1時間と、販売する約2時間、合計で3時間ほどの時給を得ることができるので、もしも
路上販売がうまくいかない日だって、気持ちの拠り所にできると思ったんです」(枝元さん)
ビッグイシュージャパンの販売員は100名前後だが、立ち上げ段階であるため「夜のパン屋さん」には3名の固定販売員
さんがローテーションで担当する(10月時点)。また、販売員さんたち以外の枝元さんや支援者の方々はボランティア
であり、まずはきちんと事業として循環し続けられる仕組みを確立させることを重要視している。
「誤解されやすいのですが、夜のパン屋さんは売れ残りを安く売る活動ではないんです。こだわりの素材をつかって
人の手で丁寧に作られた食べ物はきちんと対価を得るべきだと思っているので、パン屋さんから購入させてもらって
います。そこに、販売員さんたちの支払いや場所代などの諸経費を含めて再販する仕組みです。これにより、パン屋
さんは売り切りを目的に営業時間を伸ばす必要がなくなるかもしれませんし、購入する人も、こだわりのパン屋さん
まで仕事帰りに行けないけど最寄駅の近くで買えるようになったりします。その間を販売員さんが取りもつことで、
食品廃棄も抑えられる。私ね、ぜったいに食べ物を捨てたくないんですよ」(枝元さん)
(一部抜粋)
https://ideasforgood.jp/2020/11/09/bigissue-bakery/